■進化した松下洸平の演技

 ドラマの前半は、児童たちをメインで描き、牧野(松下)はフォローする立場だった。それが最終盤に入り、牧野の過去を清算するため、牧野の変化も描くようになってきた。原作が完結するコミック17巻の著者あとがきに「牧野視点ならまた違った物語だっただろう」とあるが、ドラマでは、それを受けた改変が行われていたのかもしれない。

 視聴者が絶賛するように、牧野の不器用な優しさが刺さるのは、児童たちに寄り添うことで変化していく牧野の心情を、丁寧に描いてきたから。牧野は無表情で、心情を表現するセリフはほとんどないが、それでも優しさがにじみ出くる。これを表現する松下の繊細な演技こそが、原作コミックとは違った牧野の視点を、感じさせてくれたのだろう。

 最終回は、牧野が小学校に赴任する理由となった、過去の患者・真琴(三浦綺羅/11)が登場する。そこから牧野の再出発が描かれそうで、感動の涙を呼びそうだ。癒し系の役が多かった松下にとっても、本作の役は新境地といえる。今後の活躍に期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。