■雪・清野菜名の能力にとまどいの声が

 その一方で、《主人公が職務を逸脱しすぎだし、能力が耳がいいどころか超常すぎるし、正直萎えた》《粕原さんのキャラ、ぶっちゃけ面倒くさいな。ただの自己満足にしか見えないし》など、清野演じる粕原雪が特殊な能力の設定や、事故現場に出向き、通話時の音声を思い出しながら現場検証する行動にとまどいの声も。

 なじみがあるが実際はよく知らない、消防局の通信指令センターが舞台というだけで、期待はできる。キャストも、瀬戸康史、佐藤浩市、中村ゆり、見上愛(24)など、手堅い面々がそろい、リアル路線でも十分楽しめそうなだけに、主人公の特殊能力という設定が浮いて見えてしまうのだ。これが足を引っ張らないか、心配なところだ。

 さらに、同日に放送予定だった、人気ノンフィクション番組『エマージェンシーコール 〜緊急通報指令室〜』(NHK総合)の存在も、本作にはマイナス要因になりそうだ。こちらは、ヨーロッパやアメリカで人気のシリーズの日本版で、緊急通報を受けるオペレーターと、通報者の会話だけで日本の今を描くという内容。

 24時間365日、指令室にカメラが密着する、ノンフィクションならではの緊張感を味わうと、ドラマで描かれる主人公の特殊能力が、安っぽく感じてしまうのではないだろうか。ドラマを盛り上げるため、スパイスとして採用された設定かもしれなが、初回を見る限り、正直、なくてもよかったのではないかと思う。

 ドラマ公式の相関図を見ていると、雪(清野)たち家族と距離を取っている姉・小夏(蓮佛美沙子/33)や、元消防士だという兼下(瀬戸)の過去など、緊急通報の現場以外の人間関係も描いていきそうだ。主人公の特殊能力に頼らない、リアルなヒューマンドラマに期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。