■飲み会に誘うこと自体がハラスメントに該当するケースも
村嵜氏は、トラブルが起きた23年6月の飲み会を、こう見る。
「トラブルが起きた23年6月の飲み会は、女性が中居さんと2人でセッティングした会でなければ、男性幹部が関わっているということになり、会社には責任が生じるでしょう。そもそも、知り合った飲み会が男女2人でのことなら個人の自由かもしれませんが、上司が関わっているということで、そこに“個人の意思がない”と判断できます」
「飲み会に女性アナウンサーを連れていくこと自体がハラスメントでは」という意見には、こう話す。
「昔から、取引先との接待はいろいろな業界であることです。来るように言われた女性が、自分の担当業務の一環と認識しているものであれば、誘われること自体はある意味で業務命令。ハラスメントではありません。
ただ、飲み会に誘われたこと自体がハラスメントに該当するケースとしては、自分の業務とは全く関係ない業務の取引先なのに、強制感がなくても実質強要されるような言い方をされたら、それはパワハラになります」
また、誘われた相手が自分の意思で断れる環境であれば、誘う時点ではパワハラまではいかないが、そうでない場合はパワハラになりかねないという。
「今回のような、優越的な立場の人から誘われて、番組に強い影響力を持つ中居さんのいる場所となると、断りづらい。誘う時点でパワハラになると考えられます。
本来であれば、事前にしっかり“強制参加ではない”と社員が把握できる状況にしなければいけないのに、今回はそこが曖昧だったと考えられます。断定はできないけれど、芸能界という特殊事情を考えると、わざと曖昧にしてるんじゃないかな、とも思います」
あえて細かな取り決めをせず、いざとなったら個人の責任にすり替えられるように、あえて曖昧にしている部分があるのでは――村嵜氏は、そう推測する。
「トラブルが表沙汰になったら、“個人の範疇です”と会社が逃げ切れるように、あえて細かいルールを社員に周知してなかったのかな、とも感じました。もちろん断定はできないですし、あくまでも想像ですが」
村嵜氏は最後に「あくまでも一般論」と前置きし、
「取引先との飲み会は、現在でもさまざまな業界であると思います。でも、何かトラブルが発生した場合には取引先が離れてしまうリスクもあるので、“その先は個人の自由”とはせず、“ここまでは業務の一環で、その先のプライベートで交流しないように”と、ある程度の制限は従業員に周知するのが一般的だと思うんです。
ただ、今回のケースは、アナウンサーが自分の仕事につながるように名刺を渡したという話が出ているなど特殊な事情もあるので、より曖昧さが際立っているのかな、という感じがします」
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フジテレビが未曾有の危機に陥っている今回の騒動。芸能界、テレビ界特有の“曖昧さ”が招いたことなのか……。
村嵜要(むらさき・かなめ)ハラスメント専門家
一般社団法人日本ハラスメント協会代表理事であり、東京都の令和4年度「ハラスメント対策事業」アドバイザー。今話題のパワハラ・セクハラ・カスハラをテレビ・新聞等で解説している。