■森本慎太郎の俳優としての価値
また、犯人の狂気的な人物像、氷月(波瑠)が抱えている心の傷など、全編、シリアスで暗めなトーンが続く中、この回では森本の熱さが目立っていた。鬱々とした展開の中、壁を壊すという荒業でブレイクスルーする姿は爽快。熱血若手刑事という役柄だが、それがうまく森本のキャラにハマったようで、《昭和の漢のカッコ良さが光る!》などと評価する声が多かった。
過去にも『監察医 朝顔』シリーズ(フジテレビ系)で若手刑事役がハマり、森本が主人公のスピンオフドラマ『森本刑事のオジさん監察日記』(FOD)が作られるほど。また、映画『正体』(2024年11月29日公開)では、日本アカデミー賞新人賞を受賞したが、その役は工事現場の日雇い労働者。最近は繊細な演技が売りの若手が多いこともあり、熱く汗くさい男を演じられる森本は貴重な存在と言えるだろう。
今期は明るいトーンのドラマが少なく、シリーズものの松岡昌宏(48)主演『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)を除けば、GP帯は芳根京子(27)主演『まどか26歳、研修医やってます!』(TBS系)、上川隆也(59)主演『問題物件』(フジテレビ系)、赤楚衛二(30)主演『相続探偵』(日本テレビ系)ぐらい。
一方、『アイシー』はご多分にもれず暗いシーンの連続で、正直、食傷気味だが、今回は森本演じる刑事・穂村正吾の熱血キャラが良いスパイスとなっていて、X上では、《柊班のバランスの良さが好き!1人で2人分熱い慎太郎と冷たい波瑠さんのバランスがとても良い》などと好評だった。
視聴者の間では、《山本耕史の胡散臭さの使い方がラストも合わせて上手い。今後が気になる引き…スーツがパツパツなのも含めて気になりすぎる》など、波留の相棒役の山本に注目が集まっているが、本作のキーマン的存在になるのは、実は森本なのかもしれない。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。