■放送外で起こっていた、現場での異様な“圧”

 前出の記者によれば、記者会見場の壁際には複数のスタッフが常駐していたという。また、今回は10分遅れで放送が“解禁”されたが、地上波やネットに流された映像では、しばしば「プライバシー保護のため」として質問者の音声が消されるシーンも多かった。

 ただしもちろん、現場ではすべての音声が聞こえている。その時の様子を、前出の会見に参加した夕刊紙記者が話す。

「会見の場を仕切ったのは、フジテレビの広報局長です。質問者を当てるのも、すべて広報局長の判断で、なるべく多くの質問に回答するべく、アルファベットで分けられたブロックごとに指名していました。当てられた質問者の元には、壁際で待機していたスタッフが素早く近寄り、マイクを届けるのですが、ちょっと異様だったのは“密着”ふうのカメラもついてくるんです」

 “密着”ふうのカメラとはどういうことか。前出の記者が続ける。

「会場には『記録係』と書かれた札を胸につけたスタッフがいて、質問者の発言を逐一、個別に動画記録していました。司会者に指名されると、その記録係の人間が記者の近くまで向かい、カメラを向けていたんです。

 前のほうの席の人たちに関しては後ろから後頭部を撮影していましたが、後方の質問者のところには、レンズを向けられていると分かるような距離で撮影をしていましたね。そのように質問者は個別に記録されていて、質問をする記者にとっては、自分が話している様子をずっと撮られているというのは異様な“威圧感”があったでしょうね。単なる会見記録なら、普通に全体映像は撮っているわけで……何のための“記録”なのかなと」(前同)

 会場では質問者がまとまりのない“自分の気持ち”を語ったり、質問者以外でも感情的になって野次を飛ばしたりする声も電波に乗り、前述のとおりSNS上には“記者の質”を問う声も多数書き込まれた。

 今回のフジの会見での記録係による質問者撮影の意図は不明だが、さまざまな会見や株主総会を仕切ったことのある代理店関係者は、「どんな人が、どんな言動をしたかを開催側が振り返るのは不思議ではないですね。質問者側にも記録されているという緊張感はあっていいのでは。フジの上層部が“答えられない”と言っているのに何度も同じことを執拗に聞く記者もいたし、中には暴言に近いトーンで野次を飛ばす人もいましたからね」と話す。

 やり直しという異例の事態に加えて異常な長丁場、異質な会場の雰囲気。“普通ではなかった”会見で、フジテレビが得たものは――。