■ちっとも最低じゃない『日本一の最低男』

 ただ、どうしても気になってしまうのが、一平がタイトルのように“最低”ではなく、ただのいい人に見えてしまう点だ。毎回、ラストシーンに腹黒さを見せてはいるが、子どもたちのために一生懸命な姿をさんざん見たあとなので、全く説得力がない。むしろコントじみて見えるため、ツッコミの声も少なくない。普通の家族ドラマで終わらせないよう、物語に起伏をつけるため“最低男”の設定にしたのだろうが、全体のバランスを考えるとどうにもチグハグなのだ。

 そんな、看板に偽りありのタイトルだが、このタイトル自体にも少々疑問が。「日本一の最低男」というレトロ感あるワードに続けて、「私の家族はニセモノだった」という流れ。そのまま見ると、コミカルな内容に少しブラックな要素を入れてくる展開を期待させる。しかし蓋を開けたら感動的な家族ドラマで……。視聴者が違和感を覚えても仕方ない。序盤の失速には、ちぐはぐなタイトルが大きく関わっていそうだ。

 とはいえ、家族の問題とともに、働き方、同性婚、不登校などの社会問題にも切り込み、内容自体は悪くない『日本一の最低男』。いっそ、主人公の“最低”部分を取っ払って楽しむほうが、正解のようだ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。