■「しわ寄せがくるのは俺ら」フジで働くテレビマンも怒り

 芸能プロ幹部はこう話す。

「フジテレビの社員が怒りを示したり、生活保障を訴えたそうですが……フジで仕事をしている制作会社の社員やフリーのディレクターの多くは、“しわ寄せがくるのは俺らですよ”と口をそろえます。フジテレビはメディア事業がメインですが、フジ・メディア・ホールディングスは不動産事業なども展開していますし、堅調です。今後も社員の給料が支払われなくなるわけではない。

 フジテレビでは多数のCMが放送差し止めとなり、4月以降の新規の契約も見えない。25年3月期の広告収入は、当初の予想より233億円の減収となることが発表されました。この結果、間違いなく起きるのは、番組制作費の大幅カットです。予算がない、と制作中止になる番組も出てくるでしょう。

 これで本当にマズい状況になるのは“下請け”として番組に携わるスタッフです。テレビ局で実際に現場で番組を作っているのは制作会社の人やフリーのディレクター。1つの番組でテレビ局の社員は数人、特番などではプロデューサー1人だけが社員、なんてこともあります。その社員が“下請け”となる制作会社やフリーのプロデューサー、ディレクターに仕事を依頼していくわけですが、フジテレビに限らず多くのテレビ局がこのような形で番組を制作しています。

 長らく続くテレビ不況でCMの単価も落ち、番組の制作費は年々削減されている。5年前の6~7割ほどの予算で番組が作られているのが現状で、下請けスタッフに支払われるギャラも激減しています。そこに“中居&フジテレビ問題”が勃発してしまったと……」

 一連のフジテレビの対応を受け、CMを降板したスポンサー企業は80社近くにも上り、一時、同局で流れるCMはACジャパンのものばかりになってしまった。

「フジテレビが潰れることはないでしょうが、今後の番組制作が非常に厳しくなるのは間違いありません。そしてやはり、しわ寄せを受けるのは同局から発注を受ける“下請け”の方々でしょう」(前同)

 あるフリーディレクターが現在のテレビ界の裏側を明かす。

「フジテレビではないんですが、少し前、あるキー局の特番の1つの企画を担当したんです。“これぐらいならギャラは40万円ぐらいかな”という仕事でした。それは、仕事を依頼してきた番組プロデューサーもわかっていました。ギャラの相場は、共通の認識としてありますからね。

 企画会議があり、打ち合わせを経て撮影、編集をして納品したのですが、オンエア後いざギャラの支払いの段階で“この仕事のギャラは通常なら40万円だと思うんですけど、いろいろと経費がかかり番組制作費が厳しくなりまして……申し訳ないんですが、30万円でお願いできませんか?”と言ってきたんです。これは私だけではなく、多くのスタッフにこうした提示があったそうです。さすがに話が違いますから、フリーランス新法のことも話し、“いや、それは飲めません”と難色を示したところ、結局40万円で決着はしたのですが……」