■日曜劇場みたいな大河ドラマ
江戸城内での権力争い、版元同士の陰謀。これまで吉原での人間模様が描かれてきたが、一転、江戸時代のビジネスドラマのようになってきた。しかし、もともと本作は「日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築いた蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯」を描くもの。ビジネス要素がメインなのは当然なのかもしれない。大河ドラマというより、TBSの日曜劇場っぽい。
今後の展開を史実から予想すると、蔦重を地本問屋の株仲間から締め出した黒幕・鱗形屋(片岡愛之助/52)の没落も描かれ、蔦重はさらなる飛躍を遂げることになるだろう。ビジネスドラマの定番である、主人公の成功の過程がしっかり描かれそうで楽しみだ。
また史実に忠実とはいえ、オリジナルキャラも多い本作。今回、絵の才能を発揮した謎の少年・唐丸は、写楽、歌麿、北斎など、のちに浮世絵師の誰になるのか考察する声もある。また、登場シーンはまだ少ないが、源内と行動をともにする浪人・小田新之助(井之脇海/20)もオリジナルキャラで、どのように描かれるのか気になるところだ。
けれんみたっぷりなビジネスドラマの姿が、少しずつ見えてきた『べらぼう』。エネルギッシュに立ち居振る舞う蔦重を演じている横浜流星は、本作について「いい意味で大河ドラマらしくない」と語っている。これまで見たことがない大河ドラマを、今年いっぱい楽しませてくれそうだ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。