■新しい学園ドラマ『御上先生』の難しさ
学園モノに社会問題を織り込んだ、今までにないドラマではある本作。ただ、訴えたいことが多いせいか、唐突なシーンも見られた。たとえば、AIを駆使する次元賢太(窪塚愛流/21)のパソコン部屋がいきなり紹介されたり、東雲温(上坂樹里/19)の父親が独自に作った教科書が取り沙汰されたり、帰国子女である倉吉芽(影山優佳/23)が抱える苦悩を明かすなど。
神崎以外の生徒たちについてこれまで背景が説明されていないだけに、《人物の人となりが誰一人として分からず、問題提議ばかり出てきたからかな、制作者たちの提起したい問題が先にあって、そのための駒として生徒たちが配置されている印象が強くなってしまった》などと、とまどった視聴者も多い。
本来なら、生徒それぞれの背景を描写をしておくべきなのだろう。ただ、学校と文科省の物語を同時に描いていることもあって、生徒たちのキャラを見せる尺の余裕がなかったのかも。さらに、今後は御上の兄・宏太(新原泰佑/24)の自死の真相も描かなければならないことを考えると、ちょっと詰め込み過ぎのように思える。
本作がこれまでとは一線を画した新たな学園ドラマとして、令和ならではの教育のあるべき真の姿を描くためには、脚本も演出も大変な工夫が必要となるだろう。だが、その点でいうと、第3話でほころびが見えてしまったように思える。
とはいえ、物語はまだ序盤。次回は、隣徳学院では学園祭が行なわれ、文科省が生徒に手を出してきて“生徒VS国家”となるらしい。学校の問題、元教師の不倫問題、殺人事件、文科省の闇……それらの抱える点と点がつながっていく、これからの展開に期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。