■今ならDV間違いなしの星一徹

 1968年から放送された『巨人の星』(日本テレビ系)は、主人公の星飛雄馬が父・星一徹の厳しい指導を受けながらプロ野球選手を目指すスポ根アニメの代名詞。特訓の一環で生まれる魔球や、親子の葛藤が話題を呼びました。

 とはいえ、一徹の指導はどう見ても過激すぎ。ランニングコースが工事中だったため近道をした飛雄馬が、一徹からボコボコに殴られるシーンは現代では「指導」では絶対に通じません。一徹の代名詞である“ちゃぶ台返し”も家庭内暴力そのもの。海外で『巨人の星』が放送された際には“食べ物を粗末にしている”と考え、“ちゃぶ台返し”をカットとした国もあったようです。

 1981年に放送された『まいっちんぐマチコ先生』(テレビ東京系)は、教師であるマチコ先生と生徒たちの日常を描いたコメディ作品。子ども向けでありながら作中にはお色気シーンがあまりにも多い。マチコ先生が頻繁に服を脱がされたり、生徒たちからセクハラを受けたり、同僚の教師や校長からも性的な行為を行われたりする描写は、令和では完全にNG案件です。

 高橋留美子原作の『めぞん一刻』(フジテレビ系)は、1986年に放送され、一刻館というアパートを舞台に、管理人の音無響子と住人たちの人間関係が描かれました。

 ラブコメディの金字塔となった同作ですが、ネグリジェで登場する6号室の住人でセクシーキャラの六本木朱美や、5号室の部屋の壁を壊して6号室の部屋を覗いている四谷の描写は、今なら不適切とみなされそう。住人たちの飲酒や騒動が頻繁に描かれる点も、未成年者への影響を考慮するとグレーゾーンでしょう。

 1973年に放送された『ジャングル黒べえ』(テレビ朝日系)は、主人公の黒べえが恩返しのために人間社会で奮闘する物語。しかし、黒人を連想させるキャラクターデザインや言動が差別的な表現として非難されることがあり、再放送は絶対に無理とされています。

 1988年から放送された『美味しんぼ』(日本テレビ系)は、究極のメニューと至高のメニューを巡るグルメバトルを描いた名作アニメですが、実は15話以上のエピソードが再放送されていません。

 たとえば、捕鯨問題を扱ったエピソードでは、捕鯨文化の肯定的な表現が反捕鯨団体からの抗議を招くことや、食品添加物を批判する内容も特定の企業や業界からの反発を引き起こす懸念があることなどが封印理由とされています。

 ネット上では、

《昔のアニメって、女性キャラの扱いがひどい。性的な描写やセクハラ的なシーンが多くて、不快に感じることがある》
《昭和の作品には、今では問題視されるような暴力的なシーンや過激な表現が多い。子ども向けとは思えない内容もあって、時代の違いを感じる》
《昭和アニメを観ることで、当時の社会や文化を学べるのが面白い》
《昔のアニメには、制作者の情熱が感じられて、ストーリーも深い》

 といったさまざまな感想が聞かれます。

 昭和のアニメは、現代では許容されない要素を多く含んでいる一方で、その時代背景を反映した魅力を持っています。当時のアニメならではのエンターテイメント性を再評価することも重要ではないでしょうか。

トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。