日本国民を震撼させる事実が発表されたのは、1月15日のことである。
「政府の地震調査委員会は、マグニチュード8~9程度が想定される、“南海トラフ地震”の30年以内における発生確率を、今年は80%程度に引き上げました。
この数字は年々上がっており、委員長の平田直東京大学名誉教授は、〝いつ起きてもおかしくない〟と、警鐘を鳴らしています」(全国紙社会部記者)
南海トラフ地震は、静岡県に面した駿河湾から宮崎県東部にある日向灘のプレート境界を震源域とし、これまで100~150年の間隔で発生してきた。
「死者・行方不明者1223人といわれる1944年の昭和東南海地震から、今年で約80年。いつ、大地震が列島を襲ってもおかしくないので、防災知識のアップデートは必要不可欠です」(前同)
地震直後の行動として第一に求められるのは、身の安全を確保することだろう。小学校の防災訓練などでは、テーブルの下に身を隠すとも教わった。しかし、『防災システム研究所』の所長で、防災・危機管理アドバイザーの山村武彦氏は「正解とも言い切れない」と話す。
「テーブル下に隠れるのは間違ってはいませんが、家が倒壊したら元も子もない。大切なのは、自宅の耐震強度を知ることです」
基準となるのは建物の築年数だという。
「2016年に発生した熊本地震で、約2000棟の木造家屋の被害状況を調査したところ、00年6月1日以降に建てられた〝新・新耐震基準〟の建物は、61.4%が〝被害なし〟でした。
それ以前の建物には甚大な被害が出ています。00年以前の建物に住んでいる人は、地震が来たら、玄関へ逃げたほうがよい」(前同)
玄関は、背の高い家具やガラスなどの危険物が少ない。そのため、いざという際はドアを開けて外に脱出できる安全地帯だという。
「昔は、トイレや風呂は柱が集中していて安全とされていましたが、現代の建物には当てはまりません。
また、目の前の火は消すが、離れていたら後でよい。大きな揺れが来る前に逃げるのが避難の鉄則です。揺れを感じたら、すぐに玄関へ行きましょう」(同)
また、地震発生後は、防災頭巾を被って屋外へと習った人も多いと思うが、
「マンションなど、耐震強度の高い建物なら、すぐ外に飛び出さないほうがよい。揺れているときに外へ出ると、外壁などの落下物でケガをする危険大です」(同)
また、地震で倒壊した2階建て家屋の多くは、1階部分の損傷が激しいという。「2階にいたら下の階には下りず、その場で身を守りましょう」(同)
身の安全を確保したら、次は、避難場所への移動だ。この際、車は使わず徒歩移動が推奨されているが、
「海岸近くで津波のリスクがある場合など、いち早く避難したいなら車を使うべきです。ただし、地域ごとに避難経路が決まっていることも。
例えば福島県では、被災時の車両禁止エリアや避難ルートを細かく決めています。ふだんから集会に参加するなどして、ルールの把握に努めましょう」(同)