■避難所に行けば大丈夫は幻想

 震災時にも欠かせないのは、スマホだ。スマホアプリ情報メディア『Appliv』が男女663人を対象に行った調査によれば、約4割の人が、「災害時にスマートフォンは役に立たなかった」と回答。理由として、通信障害や停電が列挙されている。しかし、この意見を前出の山村氏は否定する。

「自治体の『防災メール』に登録しておけば、被災時に最新情報が得られます。また、『東京都防災アプリ』など、オフラインでも使える、避難所マップを搭載したアプリもある」

 今や生活必需品となったスマホは、緊急時の命綱でもあるというわけだ。

 もう一つ、被災時の生活に欠かせないのが備蓄品だ。数か月単位での避難生活を強いられることも念頭に、工夫が求められるという。

「昔は、乾パンなどの食料や飲料水が重要視されていましたが、それだけでは不十分。被災時は調味料が不足するので、うどんスープの素など、うま味を感じるものも必須です」(前同)

 実際に、被災生活を経験した人の言葉にも耳を傾けよう。最大震度7の熊本地震を経験した女優の井上晴美さんが言う。

「避難所に行けば大丈夫と思ったら、大間違い。避難所は、そこに集まった人で運営するので、場を仕切る人が決まらないと、支援物資の配給も進みません」

 被災当初は、自身が準備していた備蓄品だけが頼りだったという。

「自家用車に積んでいた水やクッキーで食いつなぎました。初めから避難所や支援物資を当てにするのは、やめましょう」(前同)

 来る巨大地震に備え、〝正しい〟準備をしておこう。

山村武彦
1943年、東京都出身。1964年、新潟地震でのボランティア活動を契機に、防災・危機管理のシンクタンク「防災システム研究所」を設立。以来50年以上にわたり、世界中で発生する災害の現地調査を実施。2000年、「近助」、「互近助」、「防災隣組」を考案し、提唱。報道番組での解説や日本各地での講演、執筆活動などを通じ、防災意識の啓発に取り組む。また、多くの企業や自治体の社外顧問やアドバイザーを歴任し、BCP(事業継続計画)マニュアルや防災・危機管理マニュアルの策定など、災害に強い企業、社会、街づくりに携わる。実践的防災・危機管理の第一人者。座右の銘は「真実と教訓は、現場にあり」。