■60代以上のファンも珍しくないKing&Prince

 推し活は若者世代からシニア世代にまで伝播。ビデオリサーチ社の調べでは今や59歳~69歳までのシニア世代の4人に1人は「推し」がいるという結果に。これまでは「老後の蓄え」を大切にするという考え方が一般的でしたが、推し活を通じて“今の自分の幸せにお金を使う”という「散財上等」の意識も高まってきているようで、ネット上では、

《スケートボードの堀米雄斗選手の写真集が出ていると聞いて買いました。久しぶりにキュンとしました》
《かなりのシニアなんですが初めての推し活をまごまごしながらも堪能中!何処にでも飛んで行けるように!必ずSnowManに会える様にワクワクしながら》
BE:FIRSTの東京ドームツアーで今年初のアーティスト推し活!うちみたいな母娘BESTYもいれば、 幼稚園、小学生連れの親子、車椅子、杖のお母さんを連れたシニア親子もいました》

 といったコメントが並んでいます。

 また、「アイドル」の推し活においては、若いファンが自分自身を投影して楽しんでいるのに対し、シニア世代は“推し”を自分の子どものように見守る“親目線”での応援スタイルであるのも特徴的。現地で応援するための「遠征」にお金を費やすガチ勢も増えてきていて、King & Princeのコンサートでは60代以上の女性ファンも珍しくないそう。韓国ドラマに影響を受けて韓国語を学ぶ、推しの健康管理に感化されて筋トレを始めるなど、「推し」をきっかけに新しい趣味や活動に挑戦するといった傾向もあるようです。

 推し活市場の成長に伴い、企業も新たな商品やサービスを展開。仏壇の「はせがわ」は、「推し」に祈りを捧げる「推し壇」を発売。自分の推しを祀る専用の台座に、LEDライトで推しを神々しく演出できるユニークさで異例の大ヒットとなりました。

 推し活には、「自分が推しの成功や影響に貢献している」という意識を持つ「応援」だけでなく、自分の推しについて語り、他者と交流する「表明」という側面もありますが、特にシニア世代は後者によって活力や幸福感が高まり、孤独感の軽減や夫婦関係の改善にも寄与しているようです。

 金銭的な負担、デジタル化への対応、チケット争奪戦の難しさ、体力の限界などを克服するためのサービスや支援が充実していけば、シニアの推し活市場は急速に拡大していくかもしれません。

トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。