■テレビ界を襲う「中居・フジテレビ不況」
博報堂DYメディアパートナーズの研究開発コミュニティ「TV AaaS Lab」は2024年9月に「テレビCM初出稿広告主分析2010―2024」を発表。
テレビCM初出稿広告主数は2010年以降減っていたものの18年から増加傾向にあり、21年には最高値を記録。22年と23年は減少に転じたが、過去14年間の中では比較的高い水準で推移しているとした。
「しかし、ここにきてフジテレビの問題が勃発。80社近くのスポンサー企業が撤退したフジテレビは当然ながら大打撃を受けていますし、4月以降の新規契約も見えていないといいます。3月期決算も大幅減収だと発表されましたよね。そして、その3月は、スポンサー企業としてはCMをバンバン打っていきたい時期でもあるんです。
3月は新生活に向けて新商品を出したり、また各企業が年度の広告予算を使い切るタイミングでもありますからね。もともとCM出稿が多い時期でフジテレビ含めて各局のCM枠がパンパンに埋まるのが同月なんです。しかし、スポンサー企業はフジテレビにCMを出せなくなってしまった。
その分を他局に回したいわけですが、他局のCM枠もすでにいっぱいですべてに対応できるわけではありません。結果、テレビではなくネットをはじめとする他メディアに出稿する、つまり広告宣伝費をテレビ以外に回すという事態になってくると見られています」(前出の民放キー局関係者)
テレビ局の放送収入にはスポンサー企業がCMを番組中に流す「タイム収入」と番組を特定せず時間枠を指定して流す「スポット収入」があり、フジテレビは24年4~9月期にタイムが約368億円、スポットは約344億円、合計で約712億円の収入を得たという。
「フジテレビは4月クールの広告枠が埋まらなければ、さらなる大打撃を受けることになりますが……危機感を抱いているのはフジテレビだけではないんです。
まず、1局でもこういった問題が起これば、テレビというメディアに広告を出すこと自体がスポンサー企業にとってはリスクだと受け止められてしまいます。“こんな問題が起こるんだったらネットへシフトしよう”となり、テレビ全体への広告出稿を控えるようになるわけです。そのため、今年の下半期以降はテレビへの広告出稿自体が減ってしまうのでは、という見方がされています。
また通常、企業は前年度の“実績”を目安に宣伝広告費を組んできます。フジテレビにCMを出せず、他局でも消化できなかった予算はネットなど他メディアにいくか、返上されるわけですが、1度、広告がテレビから離れてネットにいけば、それが実績になる。そうして、テレビで使う宣伝広告費が慢性的に減っていくんです。そこに、生まれ変わったフジテレビが戻ってきたら……縮小したパイを各社で奪い合う形になると。
今後、“フジのドン”と称されるフジサンケイグループ代表の日枝久フジテレビ取締役相談役(87)が辞任することになって、フジが新たなしっかりとした体制になり、面白い番組がどんどん作られるようになっても――もうそこには以前のようなCM出稿量はないと……。
多くの民放関係者そういう見立てをしていて、今回の件は、決してフジテレビだけでは止まらないことで、“中居・フジテレビ不況”がテレビ界を襲う――と多くのテレビマンが嘆いていますよ」(前同)
中居のトラブルに端を発した問題は、テレビ界全体に暗い影を落とすことになりそうだ――。