■逃げない姿勢が芳根京子にハマる!

 また、ラストの彼氏・砂田との、あっさりすぎる別れのシーンが話題に。しかし、X上では秒で終わった恋に批判の声は上がらず、《さわやかにかっこよく勝手に別れ告げて、ひとりスッキリして颯爽と去ってく、渡邊圭祐が意味わからなすぎて最高だった》などと肯定的な声が多数。視聴者は本作にガチな恋愛要素は期待していないのだろう。

 本作の魅力のひとつは、本格的な医療ドラマと言っていい描写のリアルさだ。医療監修を務める竹内一郎医師も公式サイトのインタビューで、医師たちの所作は当然ながら、セットの医師たちの部屋のポスターやファイル、病室の雑誌など、スタッフがリアリティにこだわっていて驚いたと語っている。医療ドラマとして、ここまで細部にこだわるのなら、むしろ恋愛要素はなくてもいい。いや、あると邪魔に感じてしまうかもしれない。

 さらに竹内氏は、前述のポスタービジュアルの「逃げないことだけ、決めてみた」というフレーズを受け、今回の点滴の針のエピソードのように、医療現場は常に「逃げないこと」の連続だとコメント。実際に研修医を指導していくうえで、「逃げないこと」という言葉は、自分たちも伝えていきたい、とても大切なテーマだと感じていると語っている。

 この「逃げないこと」というテーマに、芳根京子がうまくハマっていることも魅力だ。真面目で不器用そうな主人公・まどかが逃げないで挑む姿は、成長物語を描くドラマでは欠かせない要素で、視聴者はつい応援したくなってしまうもの。そんな姿を違和感なく演じている芳根には、まどかは間違いなくハマり役だと言えるだろう。

 スタッフの熱意、そしてテーマとうまくハマった演者。視聴者の厚い支持を得ているのは、この2つの魅力にありそうだ。全話平均視聴率が4.2%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と撃沈した、23年4月期『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ系)など、これまで主演ドラマの数字には恵まれていなかった芳根にとって、『まどか26歳』が代表作になるかもしれない。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。