■ストーリーに無駄がない『法廷のドラゴン』
本作の魅力はそのシンプルさ。恋愛要素、夢を追う、毒親との葛藤など、ドラマの味付けに使われがちなネタはなし。また、演技力十分な手堅いキャスト陣が、毎回、ドラマをきっちりと演じきっている。竜美の笑いを誘う遊びシーンも、普通のドラマなら派手にやりそうだが、ちょっとだけ。ただし、的確な入れ方にしているのもいい。
豪華キャストをうたうドラマが多い中、本作はキャストもシンプル。メインは竜美、虎太郎、経理・利江(小林聡美/59)、竜美の父・辰夫(田辺誠一/55)、母・香澄(和久井映見/54)5人で、人間関係がわかりやすい。毎回のゲストも最小限にとどめるも、若手からベテランまで的確なキャストで、ストーリーを盛り上げる。無駄がないので物語に没入できる。
また、舞台は法律事務所と法廷がメインで、派手なロケはないが、脚本と演出のテンポがいいので、飽きることはない。テレビ東京はほかのキー局と違って制作費は潤沢とはいえないが、これならば制作費も安くあげられる。お金をかけなくてもいいドラマが作れる。同局の面目躍如といったところだろう。
これまではシンプルな作りに徹底していたが、大ネタである竜美と将棋界における元ライバル・駒木兎羽(白石麻衣/32)の関係が、物語の終盤に向けて大きく動きそうだ。これを本筋のリーガルドラマとどんなバランスで見せてくれるか、手堅い良作の今後に期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。