■『御上先生』の後半は怒涛の展開か

 昭和、平成で主流だった熱血先生スタイルと違い、本作は教師は導くだけで、生徒が考えて行動に移す令和スタイル。この点は画期的だが、生徒に関するエピソードが続いていて、御上と文科省の官僚が対決するであろう本作の本筋、“権力に立ち向かっていく逆転教育再生ストーリー”がぼんやりとしか見えていない。

 日曜劇場は全10話が多く、そうなると本作は残すところ5話となる。しかし、解決すべき問題は、御上(松坂)の過去と兄・宏太(新原泰佑/24)の自死の真相、文科省と政治家のつながり、学校の闇や教師同士の不倫問題、さらに、殺人事件の犯人・弓弦(堀田)の今後や、御上と文科省の同期・槙野(岡田将生/35)との確執など山積みだ。

 さすがに、今後はこれらが描かれていくだろう。しかし、千木良(高石あかり/22)や椎葉(吉柳咲良/20)のように、まだ背景を描かれていない生徒が多く、残り5話分の尺を考えると、生徒たちの描写が少なくなる可能性も。それでは、本作が“令和の時代を生きる18歳の高校生を導きながら”とうたっている、新しい学園ドラマと呼ぶのは難しそうだ。

 ただ、次の第6話で御上の亡き兄のことが語られそうで、これで物語の全容が見えてくれば、今後話が一気に進むかもしれない。これまで本作が、緻密な構成とテンポの良い展開を見せてきたことを考えると、生徒を巻き込みながら物語の前半で描かれた多くの問題が抱える点と点が、一気につながる怒涛の展開を見せるだろう。

 配信サービス・TVerのお気に入り登録数は116.9万(2月20日午後3時現在)と好調だが、最近の平均世帯視聴率は第4話が10.3%、第5話が10.0%と、日曜劇場としては寂しい数字。今後の展開によって、この停滞感を吹き飛ばせば、初回放送時に言われていた、『VIVANT』超えの可能性はまだある。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。