■テレビ朝日らしいドラマ
“お金”がテーマだが、普通のドラマなら金融界の闇を暴くなど、もっと派手な展開になりがちなところを、本作は一族内の“お金”のトラブルから外には出ない。コミカルな芝居や言い回しでエンタメとして見せているが、冷静に見ればけっこう地味なドラマだ。
ただ、俳優陣は、それぞれがキャラ立ちする演技力に「安定感」がある。そんな、しっかり計算できるキャストをそろえているので、ずっと天宮寺家だけで展開していても、物語に飽きがこない。さらに、人情味を含みつつ、悪巧みする奴を成敗する脚本にも、スキのない「安定感」がある。これらがなによりの魅力だ。
視聴者の声に《水戸黄門みたい》という声があるが、まさにその通り。サスペンスなのに安心して見られるという点では、水谷豊(72)主演の人気シリーズ『相棒』(同局系/水曜よる9時)も同様で、『プライベートバンカー』もまた、テレ朝系ドラマの真骨頂という感じだ。
第8話では、丈洋(橋爪)が認知症を発症し、記憶を失うらしいが、まだ、天宮寺の後継者争いにはどんでん返しが待っていそうだ。最終章でさらに盛り上がりそうで、視聴者からはシリーズ化を求める声も多いが、この安定ぶりなら、同枠で前期放送の岡田将生(35)主演『ザ・トラベルナース』に続いてシリーズ化もあるかもしれない。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。