■令和にふさわしい『まどか26歳』
今回の境界性パーソナリティ障害や、第3話の妻と幼い娘を残して亡くなる胃がん患者は、普通なら何話かを費やして描きそうなエピソードだったが、それをたった1話でまとめきってみせた。それでいて足りないと感じるところがなく、演者の表現力ももちろんだが、脚本が過不足ないところは、まさに神業のようだった。
本作は「令和のリアルな医療現場に近いものを作る」ことをテーマに掲げているが、それも成功している。これまでの「令和」を強調したお仕事ドラマでは、働き方改革などが取り上げられ、それに対する葛藤やジレンマが描かれることが多かった。しかし、本作ではごくごく自然に描かれ、それぞれのキャラの距離感がとても心地良い。令和的な課題をちゃんと消化しているのだ。
X上で、《このドラマはベテラン医師も研修医に対してちゃんと先生呼びをするところが良い。そして、まどかたち研修医も仕事中は先生呼び、プライベートはあだ名呼びと分けている。ちゃんと医者という立場をそれぞれ理解してるというか、働くってそういうことだと思う。好きだな〜》と指摘する声もあるように、軽いタッチに隠れて気づきにくいが、実はかなり画期的な作品といえるだろう。
仕事、恋愛、成長と、物語を構成する要素のバランスが良いうえ、医師たちの所作やセットなど、医療現場の描写がリアルで、すべてが高いレベルで作り込まれている『まどか26歳』。第8話の研修先は乳腺外科で、乳がん患者の治療の“選択”が問われるという。終盤に向け、まどかはどの専攻医を選択するのか、今後の展開に注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。