■いまの朝ドラだからこそフィットする

 放送後、公式SNSが「瀬以は検校(市原隼人)ときちんと関係を築きたいと思う反面、察しの良い検校に心のなかを覗かれることを恐れて、うまく歩み寄れなかったんだと思います」という、小芝のコメントを紹介している。サラッと語っているが、これを演技で伝えるのは至難の技。小芝は花魁の演技が絶賛されたが、身請けされてからの感情表現は、さらにものすごいものがある。

 検校の屋敷に幕府が手入れをし、瀬川はそろそろ退場の気配だが、気になるのは小芝の今後だ。X上では、《小芝風花さんは1年かけて大河の主役を張れる器であることがよくわかったので、持統天皇はどうですか?!》《何年か先、小芝風花さん主役の大河やってくれないかな、存在感、美貌、演技力、魅せるものがある》などの声が。

 19年放送の主演ドラマ『トクサツガガガ』が話題になって以来、小芝がNHKとの縁が深いこともあって、視聴者からは大河ドラマの主役に推す声もあるが、まずは朝ドラのヒロインだろう。朝ドラは若手女優の登竜門のイメージがあるが、近年は趣里(34)や伊藤沙莉(30)など、若手に限らないキャステイングも多い。

 その理由は、朝ドラの内容の変化だ。今期の『あんぱん』は朝ドラの王道のようだが、三世代ヒロインの『カムカムエヴリバディ』、社会派の『虎に翼』、ギャルの『おむすび』など、異色の朝ドラが増えている。以前のような明るく元気なヒロインが人生を切り開いていくパターンより、複雑な内容になるため、フレッシュさ以上に演技力が求められるからと思われる。

 その点、王道でも異色でも、小芝なら朝ドラのヒロインにピッタリだろう。明るく元気なキャラだけではなく、23年『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系)でのマシンガントークのラジオパーソナリティーから、24年『大奥』(フジテレビ系)での運命に翻弄されて将軍の正室となる公家の娘まで、幅広い役を演じてきた。

 それに加え、本作で花魁・瀬川を演じたことで、さらに演技力の深化させた小芝なら、どんな朝ドラであろうと完璧に演じられるはず。朝ドラのヒロインは、26年前期『風、薫る』の見上愛(24)まで決まっているが、その後の作品に決まってもおかしくない。

 次回の予告によると、瀬川も奉行所の裁きを受けることになるが、牢に入れられることはなく、蔦重と幸せそうに抱き合うシーンが。しかし、退場は確実のようなので、瀬川が悲劇に襲われるかもしれない。『べらぼう』で見納めになる、小芝の演技を楽しみたい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。

(2025年4月6日公開)