■子役たちのエモさで乗り切れていたか
朝田家は石材店を営んでいることから、草吉(阿部)は石と泥で即席のパン窯をこしらえさせ、その間に自身は生地を発酵させて練り上げ、あんぱんを成形。完成した石窯で焼き上げたあんぱんを売ることで、家計が困っていた朝田家は収入を得る――という流れだった。
しかし、劇中では「にわか作りの石窯」だと即席感は強調されていたが、石窯はすぐに完成した感じで具体的な時間経過は描かれていなかったことで、
《泥で固めた石窯って乾かさずにそんなにすぐ使えるの…?とか、パンは発酵させないのかな…?とか気になる点がいくつかあって、そこらへんをセリフで軽くカバーしてくれてたら引っ掛かることなく見れるんだけどもね》
《あっちゅーまに石窯ができパン種が発酵し見事に焼き上がるのファンタジーすぎる》
《爆速で発酵が進んで爆速で石窯ができて、ムラもなく綺麗に焼き上がる爆速あんぱん》
《発酵はどうしたとか乾いてないのに釜使えるのかとか思ったけど朝ドラにそこまで求めてはいけないと学んだ》
といった声が多く寄せられたのだ。
『あんぱん』は決して不評作ではないが、
《ツッコミどころは多々あれどファンタジーと勢いで丸めこめてる印象で、久しぶりにシンプルに面白いなと思って見れてる》
《約2週終わって少し粗も見えてきたが、概ね楽しい!物語として成立してると、多少の粗はあまり気にならないものなんだな》
《今のところ真正面からツッコミ入れながらそれなりに楽しく見てるけど、これまでの傾向からすると本役(今田と北村)になってからが不安だし、消え物がイマイチ美味しそうに見えないのも不安》
と、好意的に見ながらも不安を感じている視聴者も多いようだ。
「視聴者の意見にもあるように、総合的な面白さから許容はされているけど、子役による幼少期編が終了してからもこの粗い感じが続くと心配、という状況のようです。Xでのツッコミも加速していくと見られるだけに、ここからが勝負ではないでしょうか」(前出のテレビ誌編集者)
長年の朝ドラウォッチャーであるドラマライター・ヤマカワ氏も、『あんぱん』の今後についてこう見る。
「あんぱん作りの謎、崇が地元から高知まで10キロ超の道程を子どもの足で平気で歩いてしまうなど、たしかに脚本にツッコミどころはあって……2週目までは前作『おむすび』で不評だったギャルと違って好印象すぎる子役たちのエモさで押し切れましたが、14日からの青年編ではどうなのか、少々不安ではありますよね」
SNSと対峙するのは現代の朝ドラの運命。『あんぱん』は、手厳しいツッコミを受けた『おむすび』とは違い、SNSユーザーも味方につけることはできるだろうか――。
ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。