■TBSの名作『JIN-仁-』もNHKが影響を与えたか
TBSの親会社「TBSホールディングス」は、神奈川県にテレビスタジオ「緑山スタジオ・シティ」を所有している。同スタジオはTBS以外の局も利用できる“貸しスタジオ”で、NHKも高橋英樹(81)主演の『茂七の事件簿 ふしぎ草紙シリーズ』(01年~03年)など、時代劇を撮る際などに利用している。最近の作品では、窪田正孝(36)主演の朝ドラ『エール』(20年前期)や吉沢亮(31)主演の大河ドラマ『青天を衝け』(21年)も、緑山スタジオで撮影された。
「多くのNHKの時代劇作品が緑山スタジオで制作されたことで、TBSサイドに時代劇のノウハウが蓄積されていったといいます。そして、その結果、大沢たかおさん(57)の代表作で綾瀬はるかさん(40)、中谷美紀さん(49)らが出演したTBS日曜劇場『JIN-仁-』(09年10月期/11年4月期)が誕生したと言われていますね」(前出の制作会社関係者)
『JIN-仁-』は、村上もとか氏の同名マンガ(集英社)が原作。文久2年(1862年)の江戸にタイムスリップした脳外科・南方仁(大沢)が主人公という、異色の医療ドラマだ。
同ドラマはまさに大河ドラマ級のクオリティから社会現象を巻き起こし、最終回は09年度連続ドラマの最高視聴率である平均25.3%を記録。東京国際ドラマアウォード、ギャラクシー賞をはじめ国内外の賞33冠を達成するなど、日曜劇場を代表する作品として知られる。
「それと似た流れで、フジが湾岸スタジオで、クオリティの高いNHKドラマの制作ノウハウを蓄積したことが、昨年に放送された月9ドラマ『嘘解きレトリック』(24年10月期)、『めおと日和』の完成度の高さにつながった、と言われていますね。『嘘解きレトリック』はミステリー作品ですが、こちらも“NHKっぽい”という感想を抱く視聴者が多い作品でした」(前同)
鈴鹿央士(25)と松本穂香(28)のダブル主演作『噓解きレトリック』は、都戸利津氏による同名マンガ(白泉社)が原作。昭和初期を舞台に貧乏探偵・祝左右馬(鈴鹿)と嘘が“聞こえる”超能力者・浦部鹿乃子(松本)が謎を解き明かす、レトロモダン路地裏探偵活劇である。
同ドラマも『めおと日和』同様にレトロな街並み、和洋折衷の衣装、小道具などが作りこまれていて、
《なんでNHKっぽいのかよくわからなかったけど、やっとわかった。お金がかかっているんだ。現代劇じゃないから、セットから道具から衣装から結構お金かかっている。今、民放でこのレベルやるところはまずないよ》
《このままNHKの朝ドラが出来そうな雰囲気、好きです》
《嘘解きレトリック、途中からNHKを見ているような感覚になった》
など、やはりNHKドラマを思い浮かべる声が寄せられていた。
「もしNHKが湾岸スタジオを利用していなかったら、『噓解きレトリック』も『めおと日和』も誕生していなかったのかもしれませんね。両ドラマとも、過激な展開よりも落ち着いた進行と丁寧な描写が人気を博している。大人気の韓国ドラマなどでは激しい、ダイナミックな展開が持ち味なので、逆にこうした優しい作品が受けているというところもあるかもしれません。
フジテレビは、新たな金脈を見つけた、と言えるのかもしれませんね」(同)
最終回が近づく『めおと日和』。NHK級の高いクオリティを維持して、春ドラマ注目度ナンバーワン作品として、素晴らしいゴールを迎えられるだろうか。