■『アンパンマンのマーチ』を連想させる千尋の魂の叫び

 また、6月12日放送回では、嵩(北村)の弟・千尋(中沢)の心の叫びが『アンパンマン』の主題歌『アンパンマンのマーチ』を連想させる、と視聴者を感涙させた。

「千尋役のオーディション課題には“『アンパンマンのマーチ』の1~3番までの歌詞を、喜怒哀楽それぞれの感情に分けて読む”というのがあったと公式が明らかにしています。それだけに、12日放送回の千尋が嵩に語りかける場面は、制作陣も強く意識をしていたシーンだったのでしょう。

 生きることの本質を強く説いているかのような、大感動のシーンだったともっぱらです」(前出のテレビ誌編集者)

 かつて、嵩と千尋が将来の進路に悩んでいた頃、亡き伯父・寛(竹野内豊/54)は「何のために生まれて、何をしながら生きるがか。何がおまんらの幸せで、何をして喜ぶがか」が大事だと、アドバイスを送っていた。

 それから時が経ち、現在。法律家を目指していたはずが、同調圧力で海軍予備学生になってしまった千尋に、兄・嵩は憤る。寛の「何のために~」を引用して思いをぶつけるも、千尋は5日後、佐世保から南方の戦地へ向かうことがすでに決定していた。

 そして、千尋も伯父・寛の言葉を引用して、「何をして生きるがか。分からんまま終わるらあて、そんながは嫌じゃ」と言い、「この戦争さえなかったら、愛する国のために死ぬより、わしは愛する人のために生きたい!」と、嵩に心からの叫びをぶつけたのだ。

 千尋の叫びに、

《千尋の言葉が、「アンパンマンのマーチ」そのものだったこと。これから先、あの曲を聴くたびに思い出してしまう気がする》
《昨日のあんぱん見てからアンパンマンのマーチ聴くと泣く 歌詞が千尋と重なる アンパンマンは千尋だったんだ…》
《アンパンマンは千尋だったんじゃないかと 顔のパンを分けてあげる優しさは千尋が抱いた弱い人を救いたい夢を嵩が形にしたんだと思うと涙が止まりませんでした》

 といった、『アンパンマンのマーチ』を連想する声、“千尋こそアンパンマンのモデルではないのか”という感想を抱く声が多く寄せられたのだ。

 大きな感動を呼び、酷くむごい「戦争編」でも視聴率が『逆転しない正義で描かれるようなので、しっかりと見届けたいと思います」

 今年は戦後80年。『あんぱん』の「戦争編」を見て、あらためて平和の大切さを思う人もいそうだ――。

ドラマライター・ヤマカワ
 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。