■視聴者が揺れなかった『恋は闇』
考察ものは伏線を確認するなど、見直しができる配信で強いが、『恋は闇』は数字を伸ばせなかった。特に前半では、万琴(岸井)と浩暉(志尊)のイチャイチャがシンプルに描かれるばかりで、考察のヒントとなる真犯人の匂わせが少なかった。万琴と浩暉が距離をおいたことでイチャイチャが減った後半から、TVerのお気に入り登録数が伸びているのが、その証拠だろう。
制作側は、幸せなイチャイチャを視聴者に見せておけば、浩暉以外の犯行を疑うはずと計算したのだろう。視聴者の浩暉に対する思い入れが強くなってくれば、別の登場人物に目が行き、そちらを疑いたくなる。有力な容疑者である浩暉と、ほかの怪しい人物たちとの間で疑う気持ちが揺れ動くことこそが考察ものの醍醐味であり、それを狙ったのだ。
しかし、その怪しい人物たちの“怪しさ”が弱くて、疑いの揺れが少なかった。視聴者は真犯人について、あれこれ考察することは少なく、はなから浩暉が本命になっていた。要するに、恋愛と考察煽りのバランスの取り方を誤ったのだ。志尊と岸井の演技が達者で、イチャイチャの印象が強すぎたというのも大きいとは思うが……。
7月期の水曜ドラマ『ちはやふる-めぐり-』は、末次由紀氏の人気コミック『ちはやふる』(講談社)が原作で、広瀬すず(26)主演の映画版から10年後の世界を描くオリジナルストーリー。次世代を担う若手俳優の當真あみ(18)が主演で、こちらも期待したくなるが、果たしてどうなるだろうか。(ドラマライター・ヤマカワ)