■『ひとりでしにたい』はアラフォー世代のリアルに挑む

 終活コメディをうたっている本作だが、初回で描かれていたのは、パートナーの不在、親の介護、孤独死、恵まれた下の世代との差など、アラフォー世代の多くが直面している、現実的な問題ばかり。コミカルな演出や演技が目立つが、視聴者の声にもあるように、まともに扱えば直視できないということだ。 

 アラフォー世代の詰んだ感は、“生きにくさ”をテーマにしたドラマで取り上げられることはあったが、ここまで正面から描かれることはなかった。ある世代のリアルな現実を描くという点では、春ドラマで1番の人気作となった、月9ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)と同じだ。

 綾瀬、山口、佐野に加え、鳴海の父役に國村隼(69)、母役に松坂慶子(72)、弟役に小関裕太(30)、その妻役に恒松祐里(26)などと手堅い俳優陣に、脚本はNHK大河ドラマ青天を衝け』に朝ドラ『あさが来た』の大森美香氏、制作統括は朝ドラ『虎に翼』の尾崎裕和氏と、良作になるのは保証済みの座組。

 さらに、19年放送の『だから私は推しました』をはじめ、NHKがたびたび取り上げる“推し活”も、本作では、推している男性アイドルのお泊りデート報道が出てしまうと「死ぬ前にオタクグッズを捨てねば」と、ばっさり切り捨てられているあたりに、制作陣の本気具合もうかがえる。

 かつて、初の単独主演連続ドラマ『ホタルノヒカリ』(日本テレビ系/07年放送)で、恋愛を半ば放棄している20代の干物女を演じた綾瀬が、追い詰められたアラフォー女性を演じる本作。リアルな演技だけでなく、歌にダンス、変顔、裸に葉っぱの着ぐるみ姿など、コミカルな演技も振り切っており、これは綾瀬の新たな代表作になるかもしれない。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。