■「父と弟が嵩の人生を導いてる」――伏線回収も話題に

 嵩(北村)が新聞社の採用試験を受けたのは複数の理由があるが、その1つは幼少期に亡くなった父・清(二宮和也/42)が新聞記者だったからというもの。

 また、嵩の採用までの経緯は、面接で失敗したことで不採用となるはずが、入稿直前の朝刊にトラブルが発生した際に、穴埋めの挿絵を描けたことで合格――という流れだったが、この裏側には、戦死した嵩の弟・千尋(中沢元紀/25)の存在も影響している。

 それというのも、嵩が穴埋めイラストを依頼されたのは、のぶ(今田)が、嵩が11年前に高知新報に投稿した4コマ漫画を社員に見せたからだが、嵩が漫画を投稿をしたきっかけは、千尋が4月14日放送回(第3週)で「兄貴の漫画、送ってみたらどうで」と、背中を押してくれたから。もし11年前に漫画を送っていなければ、嵩は「高知新報」に受からなかったかもしれない。

 こうした“つながり”に視聴者は沸騰。

《次郎はほんま結太郎に似ているんやね。のぶが次の人生に走り出す後押しをしてスキルを与えてくれるのが次郎なんやね》
《父さんの記憶が新聞社を受けさせて、かつて漫画の応募を勧めたのは千尋だったと思うし、嵩の大切な人がみんなでここに嵩を連れてきてくれたという流れだ》
《あの時、応募するよう嵩の背中を押したのは千尋だったな 父と弟が嵩の人生を導いてる》

 といった、導きを指摘する声が寄せられている。

 彼ら以外にも『あんぱん』では、嵩に「何のために生まれて、何をしながら生きるのか」という大切な考えを教えた伯父・寛(竹野内豊/54)、戦争の虚しさを痛感させる死に方をした嵩の幼馴染・田川岩男(濱尾ノリタカ/25)など、多くの人物の死が描かれてきた。

 また、ドラマの制作統括である倉崎憲氏は、のぶの妹・蘭子(河合優実/24)と結婚の約束をしていたが、出征したまま帰らぬ人になってしまった青年・原豪(細田佳央太/23)について、「豪の存在はずっとね、蘭子はじめ、みんなの心の中には生き続けている」と、6月25日に放送された情報番組『午後LIVEニュースーン』(NHK)にてコメントしている。

「倉崎氏の言葉にもあるように、人は死後も誰かの心の中に生き続けている。そして、彼らの思いを胸に、残った人は成長していくと。『あんぱん』では、主人公ののぶと嵩を通じてそれがしっかりと描かれている。主人公の成長が感じられる朝ドラだからこそ、『あんぱん』は多くの視聴者を集め、高い視聴率となっているのではないでしょうか」(前出のテレビ誌編集者)

 眞栄田の登場も期待される『あんぱん』の今後の展開に期待することについて、ドラマウォッチャー・ヤマカワ氏はこう話す。

「漫画の神様をモデルにした眞栄田郷敦さんが出演となり、嵩の漫画家としての才能に刺激を与えてくれることに期待です。東京編はにぎやかになりそうですね。

 その反面、寂しくなるのが、朝田姉妹の登場機会が激減することです。史実をもとにすれば、今後、のぶが上京、それを嵩が追っていき、結婚という展開が予想されます。舞台が東京になるぶん、高知に残った朝田姉妹を見られなくなる。もしかしたら、メイコ(原菜乃華)は歌手を目指して上京するかもしれませんが、蘭子は朝田家を守る立場になるでしょうね……」

 八木(妻夫木)や草吉(阿部)の再登場のように、別れがあれば出会いもある。『あんぱん』ではこれから先、どのような出会いと別れが描かれるのか――。

ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばし
ば。