■“熱中症対策”で改正された労働安全衛生規則――『24時間テレビ』マラソン企画は問題ない? 弁護士が解説

 夏の気温は年々上昇していて、今年も30度超えの日が続いている。6月24日には、7月末~8月前半にかけてのピーク時には35度を超える猛暑日が継続し、地域によっては40度前後に達すると、『ウェザーニュース』が発表。8月末〜9月前半も、残暑が厳しい見込みだと伝えられている。

 また7月8日には、1992年から昨年まで『24時間テレビ』に協力していたマラソンプロデューサーの坂本雄次氏が、機能性表示食品の新製品発表会に出席した際のトークで、チャリティマラソンに苦言を呈している。

 坂本氏はイベントに同席した登山家の野口健氏(51)に「五輪もそうだけど、もう時期を変えた方がいいですよね」と聞かれ、「当時はそんなに暑くなかったけど、年々暑くなっていてヤバいですよ」「寒暖計で40度は、路面温度50度を超える。おまけにアスファルトを走って反動が膝にくる」と、夏場でのマラソンの過酷さを訴えたのだ。

「さらに大きいのは、今年6月1日から、厚生労働省の労働安全衛生規則の改正により、事業者に対して熱中症対策が義務化されたことがあります。熱中症の重篤化を防止するため、罰則付きで義務化することを4月時点で厚労省が発表していましたよね。

 一部では、“もはやタレントに無茶を強いているパワハラでは”というような声もありますし、国が命を守るために本気で熱中症の対策に動くなか、8月末の炎天下の日中を走るマラソン企画は、もう厳しく思えますが……」(前出の制作会社関係者)

 労働安全衛生規則が見直されているなか、『24時間テレビ』のマラソン企画に問題はないのか――弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士が、以下のように答えてくれた。

――真夏の炎天下においてタレントにマラソンを走行させるという『24時間テレビ』のマラソン企画は、改正された労働安全衛生規則(熱中症対策に関する規定)との関係において、法的に何か問題が生じ得る行ないなのでしょうか。

「法的に問題が生じ得る可能性はあります。

 労働安全衛生規則の改正により、事業者には暑熱環境下における具体的な熱中症防止措置(WBGT値の把握、作業計画の見直し、休憩・水分補給の確保など)が義務付けられました。ただし、これが直接適用されるのは“労働者”に該当する者です。

 タレントは通常、業務委託や請負契約で活動しているため形式上は適用対象外ですが、もしテレビ局や制作会社の指揮命令下で労働者に準じた実態が認められれば、“労働者性”が認定され、規則の適用対象となる可能性があります。

 仮に直接の適用がなくても、民法上の“安全配慮義務”に基づき、制作側は出演者の生命・身体の安全を確保する義務を負っています。炎天下での長時間走行が想定される場合、医師の帯同、こまめな休憩、水分・塩分の補給、走行時間の調整など、合理的な安全措置を講じていなかったとすれば、損害賠償責任が問われるリスクもあります」(正木代表弁護士、以下同)