日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が現代のトレンドを徹底解説。今回は時間に追われる現代人の新しいライフスタイルをレポート。

 今や私たちの生活のあらゆる場面に入り込んでいる「タイパ(タイムパフォーマンス)」。費やした時間に対して得られる満足度や効果を評価する概念で、2022年には三省堂の「今年の新語」大賞を受賞し、すっかり定着しました。SNSでも、

「歯磨きしながら筋トレしてる。やりたいこと多すぎて、効率化が必須」

「ドラマはネタバレ見てから見る派。無駄な時間使いたくないし、面白いか先に知りたい」

「本の要約サービスが便利。読む前にざっくり内容を把握できる」

といった声が聞かれます。

 実際、本の要約サービス『flier』は累計会員数125万人を突破。2025年5月現在で要約配信4000冊を取り揃えています。

 セイコーの「時間白書2024」によると、58.0%が日常生活でタイパを意識し、78.5%が「なるべく早く正解にたどり着きたい」、71.5%が「無駄な時間を過ごしたくない」と回答。「効率」は現代人にとって大きな価値となっています。

 若年層では、コンテンツの消費スタイルも変化。民放公式の見逃し配信サービス『TVer』にも再生速度調整機能が付いていますが、「SHIBUYA109lab.」の調査では、Z世代の約半数が倍速やネタバレ視聴を活用。SEEDATAの調査でも54.1%が「内容を事前に調べてから視聴する」と回答しています。

 結末を知ったうえで視聴することで、想定外のストレスや感情の揺れを避け、効率的に満足感を得ようとする傾向が見られます。

 なんと6割以上が「サプライズや想定外を避けたい」と答え、感情の起伏さえ「無駄」と捉える慎重な消費行動が浮かび上がります。