■友達に悩み相談するのも、親子の会話も時間の無駄

 日常の娯楽も時短化が追求されており、カラオケではJOYSOUNDの「サビカラ」が若者に人気。1曲あたり15~50秒という短さでありながら、採点機能にも対応しており、盛り上がる部分だけをテンポよく楽しむことで、限られた時間でも多数の曲を歌える点が支持されています。

 また、恋愛相談や人生の悩みも親や友達ではなく「AIに聞く」が当たり前になりつつあります。時間も気遣いもかけず、“即レス・的確”な回答を求める若者が増加。

 親子の会話も減り、高学年の子供がAIを友達以上に頼っているという調査も。今後、進学や就職、恋愛や結婚の相談までAIにする時代が来るかもしれません。これは便利というより、少し切なさも感じさせる兆しではないでしょうか。

「“無駄な時間を減らしたい”という背景には、やりたいことが多すぎる現代人の悩みがあります。仕事、勉強、SNS、趣味と、時間が足りない今、“選ばなかったことへの後悔”を避けるため、あらかじめ情報を整理し、結末を知って納得してから消費したいという意識があるのです。過剰な情報とコンテンツに追われる社会で、先に納得した行動を取ることが、自分を安心させる手段になっているのでしょう」(生活情報サイト編集者)

 一見、快適な「タイパ生活」ですが、その裏には時間の浪費や失敗を恐れる現代人特有の不安が潜んでいるように思えます。ただ、時間とは本来、効率で測れない価値も持つもの。すべてをタイパで計る社会に、ほんの少しの“無駄”や“余白”を取り戻す余地があってもよいのではないでしょうか。

トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。