横綱、親方として、相撲を通じて日本文化や神事に長らく関わってきた貴乃花。自身が体験したことや、本を読んで学んだこと、そして、心に残った“ニッポンの魅力”を、歴史の話も交えながら伝えていく。

 日本の夏といえば、お祭りですよね。お祭りは本来、その土地の神様に感謝を捧げる行事で、「祀(まつ)る」ことに由来していますが、それと同時に、半纏(はんてん)を粋に着こなして祭りのにぎわいに心弾む“ハレの日”でもあります。この日ばかりは、日常の“ケ”を忘れて思いきり楽しめるのです。

 日本人は、こうしたハレとケを心の糧にして生きてきました。お祭りを知るということは、つまりは日本人の信仰や暮らしを知ることだと、私は思います。

 日本各地には伝統的なお祭りがたくさんありますが、中でも有名なのが、日本三大祭りに数えられる、京都の「祇園祭」です。

 その歴史は古く、平安時代前期の869年、京で疫病が流行したときに、現在の京都市中京区にある神泉苑に66本の鉾を立てて、八坂神社の神輿を迎え、神に祈りを捧げたのが祇園祭の起源とされています。それから千年以上、町衆によって大切に守られ、現在に至ります。

 例年7月1日から31日まで、1か月にわたって多彩な祭事が行われ、この期間は、京都の街全体が祇園祭一色に染まります。