■酷暑下でのマラソンで生じる具体的な3つの症例
五藤理事長は、「そのような環境で長時間走り続けることは、以下のような深刻な健康リスクを伴います」と、酷暑下でのマラソンで生じる具体的な症例を3つ挙げてくれた。
【脱水症と電解質異常】
大量発汗により水分だけでなく、ナトリウムやカリウムといった電解質も失われる。これにより、低ナトリウム血症や低カリウム血症といった重篤な電解質異常を引き起こし、痙攣や意識障害、不整脈につながる可能性も。
【筋損傷(横紋筋融解症)】
過酷な運動は筋細胞を破壊し、筋細胞内の物質(ミオグロビンなど)が血液中に漏れ出す。この状態が横紋筋融解症であり、腎臓に負担をかけ、急性腎不全を引き起こす可能性がある。
【心血管系への負担】
長時間の運動は心臓に大きな負担をかける。特に脱水状態が加わると、血液の粘度が増し、心筋虚血や不整脈のリスクが高まる。
「酷暑下のマラソンの問題とは少し外れますが、深夜帯に走るのは暗さの面でもリスクはありますよね。足元の不注意からのケガや交通事故に遭いやすいし、場合によっては不審者による犯罪などに巻き込まれるおそれもある。その意味でも、深夜に走るのは大丈夫とは言えません」
――今回、マラソンランナーを務める横山さんは体力がある男性とはいえ44歳。その点はどうお考えでしょうか?
「どれだけ準備しているかによると思います。たとえば、フルマラソンに準じたトレーニングをしていて、日常的に何十キロも走っている人だったら大丈夫でしょうが、そうでないなら体力の回復には個人差がありますからね。40代になると、個人の体力や回復力には大きな差が出始めます。一般的に、若年層に比べて身体的な回復に時間がかかるようになり、疲労の蓄積が深刻な健康リスクにつながることがあります」