■いい人のドラマが飽和状態か

 外科部長・東郷陸郎(池田成志/62)の息子であり、有能な外科医である康二郎(真剣佑)と徳重(松本)が対立し、これまでより少し派手な展開になるかと思ったが、いつも通り穏やかに物語が進んだ。猛暑で疲れた体に、しみわたるような心地よさが本作の魅力だが、一方でそれが視聴率ダウンの理由かもしれない。

 ここのところ、4月期の『対岸の家事』(TBS系)や『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)など、悪い人が出てこない癒し系ドラマがトレンドだ。本作もその流れにあるが、今期はほかにも『明日はもっと、いい日になる』や『僕達はまだその星の校則を知らない』(ともにフジテレビ系)があり、ちょっと食傷気味かもしれない。さらに、この3作が日曜、月曜放送と連続しているのも良くない。

 今期は、これらのヒューマン系以外のドラマはあるが、はっきりと陰謀・復讐系だとわかるのは、『DOPE 麻薬取締部特捜課』(TBS系)と『DOCTOR PRICE』(日本テレビ系)ぐらいだ。『しあわせな結婚』(テレビ朝日系)も殺人事件の真相に迫るタイプのようだが、変化球っぽいノリなので除外しておこう。

 また、ミステリーといっても、『大追跡〜警視庁SSBC強行犯係〜』(テレビ朝日系)と『最後の鑑定人』(フジテレビ系)は、ともに軽いノリがあり、陰謀・復讐系のハードな印象はなく、どこか柔らかい印象。本作や『明日はもっと』、『僕達はまだ』だけでなく、全体的にいい人ばかりで悪い人がいない感がある。そのため埋没してしまった感があり、癒やしの魅力が発揮しきれていないのだろう。

 とはいえ、『19番目のカルテ』が、患者の命を救うだけではなく、“生きる”ことの痛みに寄り添う徳重の姿が、視聴者の心に響く良作であることは確かだ。本作は今回の津田健次郎のように、ゲスト俳優の好演も評判で、第4話は糖尿病の患者役の浜野謙太(44)、その妻役の倉科カナ(37)が出演する。充実した内容を期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。