■なぜ、教科書にROLANDだったのか
加速するデジタル社会、子どもたちはスマホやSNSが当たり前にある時代を生きている。そうした現代における課題は、「負の側面」への理解だという。
「デジタル機器を長時間使用することによる健康面への懸念や、フィルターバブル・エコーチェンバーの影響、SNS等を使ったいじめや犯罪など、デジタル社会の負の側面が顕在化しています。デジタル社会を生きるためには、これらの負の側面も理解したうえで、適切に活用する力を身につける必要があります。
道徳科は“よりよい生き方”について、教材を基に考え、学級のさまざまな人と対話しながら、その時点での自分なりの答えを探す時間です。教科書で『スマホやSNSはこう使うべき』と示すのではなく、さまざまなつきあい方を紹介することで、子どもたちが主体的に、プラス思考でよりよいつきあい方について考えられるよう意識しています」(Gakken小中教育事業部・教科図書編集課の道徳チーム=以下同)
スマホやSNSとのつきあい方を考えるための教材として、なぜROLANDの著書だったかという理由は2点ある。
「ひとつは、子どもたちに比較的近い世代でありながら、あえてスマホと離れる選択を取ったことが、子どもたちの興味や問題意識を高めると考えたからです。もうひとつは、著書『君か、君以外か。君へ贈るローランドの言葉』を拝読して、教育や子どもたちが生きる未来に高い関心をお持ちだと感じたからです」
ROLANDの言葉がもつ「説得力」にも注目した。
「道徳の教材は、価値観を押しつけるものであってはなりません。そのうえで、子どもたちが、教材と自分を結びつけ、主体的に考えられることが大切です。ROLANDさんは学生時代サッカー選手を目指して練習に励み、挫折を経験したというエピソードがあり、そうした部分からも、子どもたちが自分自身と重ねて考えられるのではないかと考えました」