日本競馬界のレジェンド・武豊が名勝負の舞台裏を明かすコラム。ここでしか読めない勝負師の哲学に迫ろう。

 コロナ禍で中止になった2020年と21年を除き、昨年まで8回すべてに出場してきたワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)が、今年も夏の札幌を舞台に開催されました。

 これまで、優勝1回、2位が4回、3位が1回と6度、表彰台に上がっていますが、最高に気持ちがいいのは、やっぱり表彰台の真ん中です。

 選んでくださった選考委員会の方々へ、応援してくれるファンの皆さんへ、ともに戦ってくれるパートナー、関係者すべての方へ、感謝の気持ちを手綱に込めて臨んだ初日は、第1戦が10着、第2戦が9着。2戦の合計ポイントが3と、大きく出遅れてしまいました。

 翌24日は、最終の第4戦で、なんとか2着を確保し、20ポイントを加算しましたが、4戦の合計は24ポイントで9位。

 今年のWASJは、世界の名手と戦えた嬉しさと、表彰台に立てなかった悔しさが相半ばする結果に終わってしまいました。もし、来年も参戦する機会をいただけるなら、次こそ表彰台の真ん中を目指します。

 それでも、人間万事塞翁が馬。悪い結果に終わることもあれば、飛び跳ねたいようなニュースもあります。

 8月23日の中京で、前人未到の、とてつもない大記録が生まれました。

 1976年1月10日、京都2Rのメイショウグリーンで初勝利を挙げてから約半世紀。“メイショウ”の冠名で愛される松本好雄オーナーが、個人馬主としては初となるJRA通算2000勝を達成しました。

 松本オーナーとは父・邦彦の代から、ずっと公私にわたってお世話になっていて、父が亡くなったとき、告別式で、父の遺影に向かって、「あなたのような親友と40年以上、ともにできたことを誇りに思います」と語りかけてくださった言葉を、僕は忘れません。