横綱、親方として、相撲を通じて日本文化や神事に長らく関わってきた貴乃花。自身が体験したことや、本を読んで学んだこと、そして、心に残った“ニッポンの魅力”を、歴史の話も交えながら伝えていく。
相撲とゆかりの深い神社は全国各地にありますが、中でも有名なのが、茨城県の鹿島神宮と千葉県の香取神宮です。
多くの相撲部屋では、神棚の中央に日本神話の最高神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)を、その左右には鹿島・香取の御祭神を祀っています。
というのも、鹿島神宮の御祭神である武甕槌命(たけみかづちのみこと)と、香取神宮の経津主命(ふつぬしのみこと)は、日本神話における“国譲り”の場面で重要な役割を担った神様だからです。
今回はまず、そのお話を紹介しましょう。
国譲り神話とは、天上の国の高天原(たかまがはら)にいた天照大御神が、地上の国、つまりは日本列島を治めていた大国主命(おおくにぬしのみこと)に、この国を譲ってほしいと申し出る物語です。
この後、天照大御神の孫である瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が、三種の神器を携えて地上に降臨する、“天孫降臨”のお話につながるので、国譲り神話は、日本の建国において重要な出来事だったと言えます。