■東西国家間の争いが国譲り神話の真相?
さて、ここからは少し視点を変えて、鹿島・香取にまつわる興味深いお話を紹介しましょう。
日本の古代史・美術史を研究していた東北大学名誉教授の故・田中英道先生は、生前、“高天原”とは天界ではなく、茨城県の鹿島神宮あたりを指していたという説を唱えていました。
現に、鹿島神宮の近くには今も高天原という地名が残っているそうです。
だとすると、前述の国譲り神話は天界と地上ではなく、東西の古代国家の争いだったとも考えられます。
ちなみに、田中先生は、縄文時代の東日本には”日高見国”という古代国家が存在していたとも語っていました。
その名の通り、「日(太陽)が高く見ている国」なので、日本列島の最東端にあり、太陽が最も先に昇ってくる千葉県と、その周辺の関東一体にあったとしてもおかしくない。
そして、その国家の中心が、聖地の鹿島神宮だったのではないか、というわけです。
これらは、あくまで仮説です。ただ、弥生時代まで、人口の多くが関東や東北地方に集中していたと唱える研究者もいます。
そのうえ、縄文時代が1万年以上続いたにもかかわらず、その時代の遺跡の多くが、東日本に集中しているという謎もあります。
もしかしたら、かつて関東には古代国家があったのでは――。
そんなロマンに浸りながら、鹿島・香取神宮を訪れてみてはいかがでしょうか?

貴乃花光司(たかのはな・こうじ)
1972年8月12日、東京都生まれ。88年、藤島部屋に入門。92年の初場所で、史上最年少の19歳5か月で幕内初優勝。兄・若乃花と「若貴フィーバー」を巻き起こす。94年11月に第65代横綱に昇進。幕内優勝22回。生涯戦歴は794勝で、「平成の大横綱」と呼ばれた。2018年に日本相撲協会を退職し、現在はテレビ、講演会等、幅広く活躍中。