■スマホは得意だがパソコンは苦手

「Z世代は1台目からスマホの世代。通話よりLINE文化で育ち、電話や対面のコミュニケーションが苦手です。大学生でもメールを半年後に返すことがあるほど。コロナ禍で人間関係を築く経験が乏しかったこともあり、精神年齢が実年齢より3歳ほど幼い人もいます」

 さらに深刻なのは、デジタルスキルの逆転現象。

「彼らはスマホ入力には強いが、逆にパソコンを使いこなせない。エクセルやワードでつまずき、パワポ資料すらまともに作れない。大学レポートもスマホで完結するのが当たり前で、社会に出てもブラインドタッチすらできない人が少なくないんです」

 組織への帰属意識の希薄さも顕著だ。

「以前は部活や体育会で上下関係を叩き込まれましたが、今はそれがパワハラでニュースになる時代。チームで汗をかく場がなくなり、“for the team”よりも個人のやりたいこと優先。権利が通らなければすぐ辞める。人手不足ゆえに企業も強く出られないのが現実です」

 原田氏はこう結論づける。

「老害と呼ばれる人たちは、少なくとも実績や経験を持っていました。しかし若害は努力や成果もないまま、少子化を背景に“力”を得てしまった存在。だからこそ企業は頭ごなしではなく、個人ごとの目標設定や受け入れやすい研修を工夫していくしかないんです」

 彼らの存在は、現場にとって避けて通れない大きな悩みのタネとなっている。

原田曜平(はらだ・ようへい)
1977年4月4日生まれ。マーケティングアナリスト。芝浦工業大学デザイン工学部UXコース教授。東京都出身。慶應義塾大学商学部卒業。商社に勤務する父親の転勤に伴い、小6の9月から中2の10月までオーストラリア・ニューサウスウェールズ州シドニーに住んでいた。広告業界で各種マーケティング業務を経験し、2022年4月より芝浦工業大学・教授に就任した。日本や世界の若者の消費・メディア行動研究及びマーケティング全般を専門とする。2013年「さとり世代」、2014年「マイルドヤンキー」、2021年「Z世代」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネート。「伊達マスク」という言葉の生みの親でもあり、様々な流行語を作り出している。主な著書に「寡欲都市TOKYO 若者の地方移住と新しい地方創生(角川新書)」「Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?(光文社新書)」など多数。