史上最速でセ・リーグ制覇を達成したタイガースと衰退が進むジャイアンツ。天国と地獄の両チームの裏側に迫る!

「V逸は致し方ないにしても、首位阪神とまさか、ここまで差がつくとは……」

 G党のそんな嘆きが、そこかしこで聞こえるほど、今季のセ・リーグペナントレースは阪神の独壇場。

 史上最速Vというオマケ付きで、球団創設90周年の節目を見事に飾った。

「今季の阪神は、12球団で唯一、支配下の日本人選手全員が35歳以下。FA権を取得した近本光司でも30歳です。今年37歳になる坂本勇人らがいまだに話題の中心になりがちな巨人とは、そのあたりでも違いは鮮明でしたよね。

 藤川球児監督(45)も2020年までは現役。今季の独走Vは、ここ5年で積極的に推し進めた若返り戦略の勝利とも言えそうです」(スポーツジャーナリスト)

 そこで今回は、明暗分けたライバル球団、巨人&阪神の“現在地”を、識者の分析を交えて徹底検証。黄金期の到来を予感させる阪神の未来と、巨人復権の可能性を探りたい。

 まずは今季の“主役”とも言える阪神から。

 勝因として、まず挙げられるのは、外国人選手に過度な依存をせずとも投打に噛み合った豊富な戦力。加えて、主力に深刻な故障者が出なかったのも、他を引き離す強みになった。阪神OBの藪恵壹氏も言う。

「主力の多くが、岡田彰布前監督の薫陶を受けて、日本一も経験している。選手たちが個々に成熟していて、自身の果たすべき役割をしっかり把握できていたのも大きかった。 

 その意味で、コーチ経験もなく就任した藤川球児監督にとっては、タイミング的にも幸運だったね」

 とはいえ、その藤川監督も、ケガの防止やリスク管理などの面では、新人監督らしからぬ徹底ぶり。

 春季キャンプでは、提出された前年度の故障履歴リストを踏まえて、事細かくトレーニングメニューに反映。宜野座村野球場の芝の長さも、甲子園に合わせてミリ単位で気を配った。

「開幕後も、連投の翌日はベンチからも外すなど、とりわけ投手管理は徹底していた。1軍で投げた投手は、V決定までに延べ30人。これは私の経験から言っても、かなり多い。その点からも故障リスクの軽減に、いかに心血を注いだかがうかがえる」(藪恵壹氏) 

 脂の乗った個々に成熟した主力選手たちに、初年度Vの経験値を上乗せした若き監督の手腕が加わる。

 そう聞くだけで、虎党が待ち望んだ黄金期の到来は必定。向こう数年は安泰のようにも思える。

 だが、前出の藪氏は、「事は、そう簡単ではない」と、不安要素を指摘する。

「監督が誰であっても、就任1年目は、選手側も出方を探っている。内心思うところはあっても、そりゃ言うことを聞くでしょう。

 ただ、来年以降も、それが続く保証はまったくない。持ち前の決断の早さが、かえって反発を招く可能性も大いにあると思いますよ」

 長年ローテーションを支えた西勇輝(34)は、わずか1試合で見切りをつけられ、その後は2軍暮らし。

 球団の人気選手でもある捕手の梅野隆太郎(34)も、出場機会は昨季の95試合から、ほぼ半減。FAでの流出も取り沙汰されている。

「昨秋の就任会見でも物議を醸した“力のないベテランは必要ない”なる言葉を図らずも体現した格好だが、冷淡とも映る、そうした態度を選手らがどう取るか。

 衰えが隠せない梅野はともかく、西は22年オフに結んだ4年総額12億円の契約が来季も残る。ベンチ人員の頻繁な入れ替えによる出場機会の減少は、多くの選手にとっては死活問題でもありますしね」(前同)