■名将が敷く“恐怖政治”軋轢

 また、そうした危惧を裏づけるかのように、裏側を知る番記者陣からは、藤川監督の「完璧主義の度が過ぎる」との声もチラホラ。

 中でも、外部に情報が漏れることを嫌った“統制”の徹底ぶりには、それを得ることが仕事の記者らもホトホト辟易したという。

「自分の関知しないところで事が動くのがとにかく許せないようで、ある新聞が昇格人事を抜いたときなどは、個別に記者を呼び出して、“今後の取材対応を考える”と半ば恫喝。漏らした担当コーチを怒鳴りつけたりもしていました。

 4月に井上広大(24)が2日で降格されたのも“犯人探し”の結果、彼自身による漏洩が発覚したことが、原因でしたからね」(在阪スポーツ紙記者)

 もっとも、当の藤川監督自身が並々ならぬ覚悟でシーズンに臨んでいたことは誰しも認めるところである。

 優勝翌日のスポーツ報知には、昨季まで専属契約の同紙だからこそ書ける秘話として、就任に際し、「俺は死んだと思ってくれといわれた」という夫人の逸話も紹介されていた。

 前出の記者は、「結果が出たから美談にもなるが、発言自体は自己中心的で、“そこまで己を追い込める自分に酔っている”ようにも受け取れる」と辛口評価。続けて、こう指摘する。

「就任直後から“シーズンに集中したい”と自軍のOBは意図的に遠ざけておきながら、かねてから懇意の佐々木主浩氏らには自ら対応するなど、ある種の言行不一致も周囲は見ている。

 そうした独善的とも取れるふるまいは、今後の“火種”になる気もします」

 では、藤川阪神がこの先、黄金期を築くために必要な条件とは何か。

 藪氏は、「チーム全体を俯瞰できるGMの必要性」を挙げて、こう続ける。

「今すぐにではないにしても才木浩人(26)や佐藤輝明(26)、森下翔太(25)らは、いずれ出て行く。選手のメジャー志向が今後も弱まることはない以上、それらを見越した後釜育成にも今から着手すべきです。

佐藤輝明がプロ通算100号
メジャー挑戦を公言する佐藤輝明 ※画像/公式インスタグラム『teruaki_sato_8』より

 問題は、中・長期的な目線でチームを見られる人材が、今の阪神にはいないこと。高卒生え抜きをいま一つ育て切れていないのも個人的には気がかりです」

 一方、後釜問題に今まさに直面しているのが阿部巨人だろう。

 主砲・岡本和真(29)の復帰で、来たるCSには期待も持てるが、その岡本は今オフにも渡米の見込み。

 首位阪神に15ゲーム以上もの独走を許した今季の戦いぶりを見ても、“ポスト岡本”のメドは立っていない。OBの角盈男氏が言う。

「戸郷翔征(25)の不調も想定外ではあったが、ここまでの差がついたのは、やはり4番の不在。岡本の離脱さえなければ、阪神とも終盤まで競った展開ができていたと断言できます。

 それが証拠に、ぶっちぎりで最下位のヤクルトでさえ、村上宗隆(25)の復帰以降は、まともに戦えるようになっていますしね」

 得点力が下がれば、必然的に投手陣への負担も増す。能力は高いが、経験にはまだ乏しい若手投手が多い今季の巨人では、「それが顕著に出た」と、角氏が続ける。

「打線への信頼がなければ、先発も思いきり腕は振れない。“点をやれない”という重圧から、投球はどんどん小さくなるものです。

 その結果、終盤まで投手陣が持たず、大勢(26)に加えてマルティネス(28)まで引き入れた今季の強みを生かせなかった。結果的には、その悪循環こそが最大の敗因でしょう」