■《蘭子と八木さん》――描かれなかった2人の名前がトレンド入り

 最終回直前の25日放送回、八木(妻夫木)は難民キャンプの取材のために海外へ行くことが決まっている蘭子(河合)に、指輪をプレゼント。微笑みながら無言で去ろうとする蘭子だったが、八木が「帰ってきたら……考えてくれ」と伝えると、蘭子は力強く「はい」と返す。そして、スーツケースを引きながら、蘭子は八木のもとを去る――というシーンが描かれた。

 しかし、最終回では2人が登場することもなく、その後の2人がどうなったのかも描かれなかったため、“モヤモヤ”を感じている人は多いようだ。

《のぶと嵩の大円団も大切なのはわかるけど、八木さんと蘭子がどうなったのかモヤモヤしながら終わってしまいました》
《せめて指輪をはめている蘭子を見たかったな》
《蘭子と八木さんはきっとその後幸せに暮らしてるやろうと勝手に思ってるけど…やっぱ映像で見たい》

 Xでは、《蘭子と八木さん》がトレンド入りするほどだった。

「25日放送回で想像の余地を残しつつもしっかり描いたと言えるのかもしれませんが……やはり、2人の“その後”が気になっている視聴者は多いようです。蘭子のモデルが脚本家、エッセイスト、小説家として活躍した向田邦子さんだと言われていることから、”幸せなその後を見て安心したい”という声もあります」(前出の女性誌編集者)

 向田さんは映画雑誌『映画ストーリー』(雄鶏社)の編集者として働くかたわらシナリオライターを目指し、後に脚本家、エッセイスト、小説家として活躍した女性。しかし、昭和56年(1981年)8月22日、台湾への取材旅行中に、台湾で発生した航空事故としては2番目に多い犠牲者を出した『遠東航空103便墜落事故』の犠牲者となってしまい51歳で亡くなっている。『あんぱん』では、”旅立つ直前にプロポーズされる”という“死のフラグ”まであったことから、

《フラグじゃないよね…結婚するよね…!?モデル向田邦子さんらしいから…》
《アカンわ、王道の死亡フラグやわ、飛行機事故で亡くなるやつやわ、これアカンて》

 などと、不安視する声が最終回前に多く寄せられていた。

「“違和感”の声も出た『あんぱん』の最終回ですが、逆に“違和感が解消された”と話題になっていることもあります」(前同)

 “解消された違和感”というのは、『あんぱん』の主題歌であるRADWIMPSの『賜物』のこと。同曲は、朝ドラの主題歌とは一線を画した、良くも悪くもRADWIMPSらしい、スピード感あふれる独特のメロディラインの楽曲。朝ドラらしからぬ曲調には《正直、慣れないじゃなく、合わない》《主題歌が気に入らない朝ドラ初めてなんだよな…》といった厳しい声も多かった。

「そんな『賜物』でしたが、最終回ではピアノオーケストラにアレンジされたバージョンが、5分のフル尺で流れたことで、曲を再評価する声が多いんです。バラードのようなしっとりとした曲調に加えて、“本来の歌詞”が視聴者に伝わったことも大きいのではないでしょうか」(前同)

『賜物』の歌詞は、オープニングの尺に収めるにあたり2番以降の歌詞だけでなく、1番の途中の歌詞もところどころカットされていたことから、“フルで聴くと印象が変わる”という声が多かった。最終回でその部分も流れたことから、

《このバージョンで毎朝聴きたかったかなあ。アレンジがとても豊かで素敵。曲や歌詞の良さがよく出てると思うのよ》
《このバラードverがOPでもよかったね》
《違和感でしかなかった「賜物」が沁みる》
《実はフルで聴く機会がなく、気になって先ほど初めて聴いた。色々賛否両論あったけれど、朝ドラで流れていない部分の歌詞もとても良くて、また泣いた》
《賜物を受け付けないって言ってた年配の方々、あそこであの歌詞が流れて号泣してるだろな…あの歌詞があんぱんの全てだよ》
《賜物はフルで聴いてこその曲だと思うので是非フルで聴いて欲しいな》

 といった、曲を評価する声が多く寄せられている。

 最終回に違和感を感じる視聴者もいた『あんぱん』だったが、“面白かった”と高評価する声が多数上がり、全話平均視聴率も16%を超えるものとなった。同作は、多くの人の記憶に残る作品となったようだ。