■日本で日韓共同制作ドラマが上手くいかない要因を元キー局プロデューサーが解説

 日本で日韓共同制作や韓国ドラマのリメイクが上手くいかない原因を、元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏は、こう分析する。

「韓ドラは世界中で注目されてお金が集まるコンテンツ。日本と比べて大規模な予算で撮られているし、そこには人も集まってくる。それを日本で再現するのは難しいです。

 残念ながら予算だけでなく、作品を撮れるテレビ業界の人材も、韓国ほど豊富ではないところもあります。日本の局がリメイクしたり日韓共同で作った作品の仕上がりが、どうしても韓国に負けてしまうのは、それが最たる理由ではないかと言われています」(鎮目氏、以下同)

 鎮目氏は予算規模に加えて、スタッフの年齢層についても指摘する。

「韓国の方が、全体的にスタッフが若いんですよね。日本のドラマはそれなりに歴史や実績もあるのですが、それによって監督やディレクター、カメラマンなど技術スタッフにしろ、年齢層が高い人が多い。50代や60代の人が演出をつけたり、撮影をしたりするわけです。

 一方で韓国は、ドラマ界が世界的に注目を集めたのが比較的最近ということもあり、スタッフもみんな若いんです。演出をする監督も、撮影技術のスタッフも若い。それによる、体力や感性の差も作品に影響していると思います」

 韓国では、撮影陣の若さもあり、現場でしつこく粘って話し合いを重ねて、時間をかけて撮影に取り組むことが多いという。若いので体力があり、柔軟な感性で創意工夫を凝らせる、という強みが韓国にはあるようだ。

「高齢化している日本だと、どうしても昔ながらのやり方にこだわってしまうとか、腰が重くなってしまうとか、そういうところがあります。つまり、予算の差とスタッフの年齢差。この2つが大きいようです」

 また、日本の地上波ドラマが海外に売れていないことも鎮目氏は指摘する。

「日本の地上波ドラマは、話数も、1話における放送時間も、国際的な標準から比べると非常に短い。そのために海外で買ってもらえないから、予算も降りない。海外で放送されづらいので、世界的な人気も得づらい。これも韓国との差になっていると思われます」

 さらに人材育成においても、韓国の方が優れている部分があるという。

「韓国は、映像業界の人材を育てるシステムが発達しているんです。どこの大学にも――芸大ではなく、日本で言えば早稲田や慶応、普通の国立大学に、映画や演劇を研究する学部があるし、大学で映画やドラマの撮り方を勉強する人も多いそうです。それにより、業界の人材の層がさらに厚くなるということですね」

 TBSは、来年1月期にはK-POPの世界を描く日韓共同制作ドラマ『DREAM STAGE』を金曜夜10時枠で放送すると発表している。今度こそ、成功なるか――。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)