■海外出身の家臣とヨーロッパへ脱出?

 こうした事実から派生したのが、“信長の生存説”です。信長は本能寺をひそかに脱出して、アフリカ出身の家臣・弥助と合流。キリスト教イエズス会の支援を受けて、ついにはヨーロッパへ渡ったというんです。

 実際、弥助は本能寺の変で明智軍に捕らえられ、イエズス会が運営する南蛮寺に引き渡されたといわれていますが、それ以降の行方は不明です。もしかすると、信長とともに海外に渡ったのではないか――そんな想像をかき立てられます。

 ここからは私の見解ですが、信長は天下取りの争いに疲れて、第二の人生を模索していたのではないでしょうか。

「秀吉、俺もう引退するから、おまえが代わりに統治しろよ。姪っ子たち(浅井三姉妹)の面倒も見てくれ」

 というやりとりがあったかは分かりませんが、もし信長が死んだのなら、姪たちは次の天下人に恨みを持って当然。秀吉も彼女らを生かしてはおかないのでは。

 好奇心旺盛で舶来品を集めていた信長がヨーロッパにひかれるのは自然なこと。

 栄華を極め、老後は海外移住。そんな最後のほうが信長らしいと私は思います。

貴乃花光司(たかのはな・こうじ)
1972年8月12日、東京都生まれ。88年、藤島部屋に入門。92年の初場所で、史上最年少の19歳5か月で幕内初優勝。兄・若乃花と「若貴フィーバー」を巻き起こす。94年11月に第65代横綱に昇進。幕内優勝22回。生涯戦歴は794勝で、「平成の大横綱」と呼ばれた。2018年に日本相撲協会を退職し、現在はテレビ、講演会等、幅広く活躍中。