■『もしがく』はスロースターターか

 一方で、《初回からキャラが多すぎだし、30分拡大もあったからか体感長めで中盤まで掴みきれなかった印象》《長時間なのにそんなに進むとかでもなく、ただ人が沢山出て世界観がわかるだけ…今の時代向きじゃ無さそう》《テンポ悪くてビックリしちゃった。尺と内容は引き伸ばされた感じ》などと、長い、つかみが甘いという声もあった。

 キャラ紹介の回だったが、単純に登場人物が多すぎて、時間がかかりすぎた。しかも、30分の拡大版だったため、より長く感じた人も多かったようだ。ラストで失踪したダンカンの代わりにリカがステージに上がったシーンでの、二階堂ふみの踊りは素晴らしかったが、そこまでに離脱した人が多かったのではないだろうか。

 今後は、登場人物が徐々につながり、ジワジワと盛り上がっていくのだろう。ただ、その人数が多いため、全体の話が動き出すのは時間がかかりそうだ。次回予告では、久部(菅田)が劇場再興を決意し、八分神社の巫女・江頭樹里(浜辺)が反対する姿があり、それぞれのスタンスが分かるようだ。要するに、第2話でやっと物語のスタート地点に立つ感じなのである。

 大河ドラマぐらいの長い尺があれば、三谷が得意な群像劇もフィットするのだろうが、現在の主流である1クール(3か月)の連ドラはスピード感が大切なため、本作にはテンポの悪さを感じてしまう。演者の力量でなんとかなるかもしれないが、正直「これだけの人数が必要なのか?」という思いは否めない。

 前評判の高さは秋ドラマの中で群を抜いていたが、初回視聴率5.4%は同枠で話題作となった、宮藤官九郎脚本の24年4月期『新宿野戦病院』の初回7.9%に大きく及ばなかった。このままだと、いざ、フタを開けてみたら……ということになりそうだが、次回以降で巻き返すことができるのか、注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。