相撲界の内情や制度、騒動の行方を、元関脇・貴闘力が現場目線で読み解く。経験者だから語れる、大相撲のリアルが詰まったコラム。
10月4日、元大関・貴景勝の「湊川襲名披露大相撲」が行われた。
「引退」を発表したのが、昨年の秋場所13日目のこと。「28歳の引退は若いよなぁ」と思ったけど、彼なりに頑張った結果だったんだと、妙に納得したことを覚えている。
だって、その1年前、2023年の秋場所は4回目の優勝をしているんだよ。特に体の大きくない力士は、1つのケガで、引退に追い込まれる場合が多々ある。「気持ち」で取っている力士だっただけに、「横綱をもう狙うことができない」と悟ったときに、潔く引退したんだな。
その貴景勝の引退相撲(断髪式)は、チケットが販売されるや否や、全席完売。最近は、断髪式をやる若い親方が、国技館内などでチケットを手売りしている場合もあるみたいだけど、貴景勝に、そんな苦労はいらなかったようだ。
引退後は、NHKの大相撲中継のゲスト解説に呼ばれて、分かりやすい解説を展開。年下の関取にも「○○関」と「関」を付けて呼ぶなど、礼儀正しいところも好評なようだ。
ただ、テレビで彼を見たことがある人はよく分かると思うけど、1場所ごとに痩せていって、断髪式では、まるで高校生に戻ったかのような激変ぶりだった。
確かに貴景勝は子供の頃は、細くてちっちゃくて、体を大きくするために、ご両親が食生活に気を配っていた。関取になってからも、牛肉を何グラム、ゆで卵を20個とか、カロリー計算をして体の維持に必死だった。
「食べることも仕事」なのが力士なのだが、貴景勝は明らかに無理をして食べていた。引退後は、これまでの呪縛から解かれて、好きなように食べているのだろう。でも、明らかに痩せ過ぎだ。