■「確認したことは事実」だが――事務所から得られた“全真相”
本サイトは事実確認のため、BS朝日と田原氏の所属事務所に取材を行なった。
まず、BS朝日からは「番組の制作過程や詳細については、従来よりお答えしておりません」と、回答があった。
その後、田原氏の事務所に問い合わせたところ担当者が、
「事務所として例の発言をそのまま放送することについて“大丈夫ですか?”と確認したことは事実です」
と話してくれた。ただ、番組サイドの対応がいい加減だったという話は否定。次のように続けた。
「基本的に『クロスファイア』を見ている人は田原のファンですし、前後の会話の内容から、“死ね”は田原が高市さんに向けて発言したわけではないことも伝わると思います」
田原氏は騒動を受け、《発言の主旨は、野党に檄を飛ばそうとしたものでしたが、きわめて不適切な表現となり、深く反省しております。本当に申し訳ございませんでした》と謝罪文を自身のⅩに掲載している。田原氏が高市総理に向けて、直接的に”死んでほしい”というニュアンスで言ったわけではないということだ。
「ですので、番組が田原の言葉を尊重してくれたのではないかな、と事務所としては思っています。
田原も、プロデューサーが真面目な人だからカットしなかったのかも、と申しておりました。番組サイドに意図的な悪意があって、そのまま放送したわけではないと思います」(前同)
どうやら、情報に尾ひれがついて拡散されてしまった、というのが真相だったようだ。
だが、番組側に悪意はなかったとはいえ、事務所側の要請を番組プロデューサーが“スルー”してしまうということはあるものなのか――元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏はこう解説する。
「基本的に、事務所側から出演タレントの発言をカットしてくれと要望があれば、応じます。タレントのイメージ管理は事務所側の管轄ですからね。
よほどカットが難しい、番組が成立しなくなってしまうような場面であれば番組と事務所が交渉することもあるでしょうが、普通は事務所の要請には応じるものなんです」
『クロスファイア』は地上波ではなくBS番組。田原氏の所属事務所も言うように、視聴者もメインは田原氏のファンだと考えられる。それだけに、センシティブな発言でもそのまま放送されてしまったところもありそうだが――、
「確かに、『クロスファイア』に田原氏ファンが多いのは事実でしょう。しかし、現在では直接の視聴者だけでなく、ネットで拡散する人、その切り抜き動画だけ見る人も珍しくない。前後の意図が伝わらず誤解されてしまったり、アンチに番組の内容が伝わることもあるわけですから、番組側の認識が甘かったところはあると思います。
ですから今回の件は、個人的には制作側の配慮不足だったと感じます。カットしない方が面白いかな、という判断だったかもしれないですが、結果として出演者にも迷惑をかけてしまったわけで……出演者を守るのもテレビマンの仕事ですから、プロデューサー側の考えが甘かったかもしれませんね」(前同)
思わぬ大騒動となってしまった田原氏の「死んでしまえ」発言。大炎上の背景にはさまざまな要因があったようだが、残念ながら番組は終わってしまった――。
鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)