日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が現代のトレンドを徹底解説。今回は昭和のころにはどこの家にもあったアレがなくなってしまうという話。

 2035年度までに、日本の固定電話を支えてきた銅回線、いわゆるメタル線が順次廃止されることが発表されました。100年以上にわたり通信インフラの根幹を支えてきた電話線は、ついにその歴史に幕を下ろすことになります。

 背景にはスマホやIP電話の普及で固定電話の需要が減ったことと、銅回線を維持するコストが膨らんでいることがあり、特に人口の少ない地域では全国一律でサービスを提供するのが難しくなっているのです。

 固定電話の歴史は意外と古く、明治時代末期。都市部では1900年代初頭から設置が進み、戦争で一度壊れた後、復興期にかけて全国に広がりました。1955年の時点では普及率は1%しかありませんでしたが、1960年代の高度経済成長期には日常の欠かせない存在となり、多くの家庭で黒電話が見られるように。

 当時、電話事業は日本電信電話株式会社が独占。離島や過疎地でも通話ができる「全国一律提供義務」があり、人口が少ない地域でもサービスを受けられました。ただ、固定電話を使うには、加入権と呼ばれる権利を購入する必要があり、当時は数万円から十数万円することもあり、電話を引くには結構な費用がかかったのです。2005年以降は加入権の支払いは原則不要になりましたが、「加入権」という言葉は一部の世代にとっては思い出深いワードです。