もうすぐ年末の旅行シーズン。一年の疲れを温泉で癒やしたいところだが、人気観光地はインバウンド客であふれ、ゆったり温泉を楽しむこともままならない。その上、問題は熊だ。
「11月4日、環境省は、今年4~9月の全国の熊の出没件数が2万792件に上り、統計開始以来、最悪のペースと発表。また、10月には、岩手県の瀬美温泉で露天風呂の清掃をしていた男性が熊に襲われ死亡する事故が発生しました」(全国紙社会部記者)
人混みを避け、熊とも遭遇しにくく、そして元気になる“穴場の温泉”はあるものだろうか。
まず、疲労回復&精力増進に効果のある温泉の選び方を教えてくれたのは、『TVチャンピオン』(テレ東系)の温泉通で3連覇をした、温泉研究家の郡司勇氏。
「寒い冬は体を温めることで血流が促進され、活力増強につながります。塩分を含んだ“食塩泉”や、鉄分を含んだ“含鉄泉”など、浴槽から出てもポカポカとして湯冷めしにくい温泉が、特におすすめです」
旅行アナリストの鳥海高太朗氏は、外国人観光客の動向を踏まえ、こう語る。
「観光庁の『インバウンド消費動向調査(24年)』によると、客の約半数が東京と大阪を訪れています。つまりその周辺と、新幹線や飛行機で行きやすい都市は避けたほうが無難」
鳥海氏は「近くに加賀温泉があるあわら温泉(福井県)や、外国人にも人気の飛騨高山の先、奥飛騨温泉郷の福地温泉(岐阜県)など、ちょいずらし温泉がおすすめ」と、こう続ける。
「北海道なら、新千歳空港から近い、定山渓温泉や登別温泉は混雑します。ただ、少しずらして帯広市だとグッと減る。『北海道ホテル』(帯広市)のモール温泉をはじめ、街中に温泉が点在していて湯めぐりを楽しめると、評判です」(前同)
東北地方では「米メディアの『26年に行くべき世界の旅行先25選』に選ばれた、山形県の銀山温泉が混雑必至」(同)だというが。
「その一方で、山形県の『肘折温泉』は穴場です。出羽山麓にある開湯1200年の温泉郷で、湯治場の面影を色濃く残しています。景観美は銀山温泉にも引けを取りません」(同)
前出の郡司氏のおすすめは、青森県の『下風呂温泉』と宮城県の『鳴子温泉』だ。
「下風呂温泉は、本州最北端下北半島の海沿いにあり、津軽海峡を望む絶景風呂と、新鮮な海の幸が堪能できます。鳴子温泉は人気ですが、インバウンド客の比率は低い。特に、湯治宿が連なる“東鳴子エリア”は落ち着いた雰囲気です」
東北には名湯が多い。そして当然、熊も多いが……。
「熊の出没数が多い上位10県のうち、8県が東北地方です。ここで紹介した肘折温泉、下風呂温泉、鳴子温泉は温泉街から離れてはいますが、熊の出没情報があります」(前出の記者)
北海道も、全道でヒグマが生息している。
「石狩平野や十勝平野など、広大な田園地帯に囲まれた市街地での目撃情報は比較的少ない。その意味では帯広市中は安全では」(前同)
熊の活動域の変化に驚くばかりだが、南下して甲信越の有名な温泉地でも、大きな変化があったという。
「山梨県の石和温泉で、中国資本による旅館の買収が相次いでいて、その数は温泉宿全体の4分の1に及んでいます」(経済紙記者)
その理由は何か。
「東京と京都・大阪を行き来し、途中で富士山に寄るのが中国人に人気の“ゴールデンルート”。石和温泉はその行程の中継地として、約20年前から中国資本が進出。今では、中国人観光客のバスであふれているんです」(中村氏)
喧騒を避けたい人は、そこから車で約25分の山梨県の『湯村温泉』がいい。
「武田信玄ゆかりの名湯で、毎分1トンもの湯が湧き出る、全国屈指の源泉かけ流し。浴槽からあふれて、風呂場の床の数センチが温泉で埋まるほど」(郡司氏)