■熊被害の日本列島に、マタギの宿は何を思う
最後に、数百年にわたり熊と共存してきた“マタギ文化”がある秋田県から、その名も『打当温泉 マタギの湯』の営業担当、斎藤さんに昨今の熊事情を伺った。
「熊被害の影響は、特にないですね。変わらずお客様に来ていただいています」
現在、人里に出没している熊には特徴があるという。
「強い熊は山中の縄張りでエサを確保できるけど、それができない弱い熊が人里へ降りてきているんです。だから、人と熊が上手に共存できる世界になってくれればと思っています。昔からマタギは、山の神からの熊という恵に感謝して暮らしていますから。その文化を、当館の熊鍋と温泉で感じてくれたら、嬉しいです」(前同)
その熊鍋は「あっさりしていて人気」だという。
「熊は捨てるところがなく、血も胆も昔から重宝されてきました。いわば神から与えられた肉は“マタギ勘定”と言って、誰が仕留めたかに関係なく、みなさんで平等に分けてきたんです」
熊も外国人観光客も我々も、平等に穏やかな日本の冬を過ごしたい――。