■盆踊りがヘブライ語 額に十字を描く風習
なぜ青森にたどり着いたのかは謎なんですけど、日本って縄文、弥生時代から、世界から人々が流入していて、ユダヤ人との交流もあって――と考えると、キリストもユダヤ人ですし、ない話ではないですよね。
新郷村には、イエス本人の墓とされる“十来塚”と、弟・イスキリの墓とされる“十代墓”がありますが、この2つのお墓が注目を集めたのが1935年のこと。『皇祖皇大神宮』(茨城県)の竹内家に伝わる『竹内文書』という古文書に、キリストが日本に渡来していたと記されていて、竹内巨麿という人物が、その記述を頼りに新郷村のお墓を探し当てたそうです。
竹内文書は学術的には偽書とされているので、記述をすべて肯定することはできませんが、新郷村の伝承に限っていえば興味深い事実が、いくつも見られます。
イエスの子孫とされ、お墓を代々守ってきた沢口家には、目が青く鼻が高い、日本人離れした風貌の人物がいたこと。赤ちゃんの額に墨で十字を書くという、十字架にまつわる風習があること。また、青森県東部には「ナニャドヤラ」という不思議な盆踊りがあり、その歌詞はヘブライ語で“救い主よ、立ち上がり給え”という意味になるとの説もあります。
今となっては真相を知る由もありませんが、今、新郷村はキリストの墓伝説の地として多くの人が訪れています。そんな不思議な話もあるんだなと、今年のクリスマスに、ふと思い出していただければ嬉しいです。
貴乃花光司(たかのはな・こうじ)
1972年8月12日、東京都生まれ。88年、藤島部屋に入門。92年の初場所で、史上最年少の19歳5か月で幕内初優勝。兄・若乃花と「若貴フィーバー」を巻き起こす。94年11月に第65代横綱に昇進。幕内優勝22回。生涯戦歴は794勝で、「平成の大横綱」と呼ばれた。2018年に日本相撲協会を退職し、現在はテレビ、講演会等、幅広く活躍中。