日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が現代のトレンドを徹底解説。今回は極めて深刻な家計と生活に関するお話。
日本は本当に貧しい国になったのか――。最近よく耳にする「エンゲル係数」という言葉をもとに考えてみると、その答えは意外に単純ではありません。
エンゲル係数とは、家計の消費支出に占める食費の割合のことです。割合が高ければ「食費に追われている=生活に余裕がない」とされ、逆に低ければ「暮らしが豊か」とみなされます。
総務省の家計調査によると、2024年の日本のエンゲル係数は28.3%。これは1981年以来、43年ぶりの高水準で、「日本は貧しくなったのでは」との声が高まっています。
戦後間もない頃、日本のエンゲル係数は60%前後に達していました。ほとんどの家庭が収入の大半を食費に充てていた時代です。
その後、高度経済成長とともに数値は下がり、2000年代には23%台に。生活に余裕が生まれ、外食や娯楽にお金を回せるようになりました。
しかしここ数年は、物価高や円安の影響で再び上昇傾向にあります。米や野菜、調味料などの食材はもちろん、飲料や外食メニューまで値上げが続き、「同じ金額ではカゴが軽くなった」と実感する人も多いのではないでしょうか。